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11本の井戸の謎

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2010年7月 6日 更新

「井戸が足りない」。

村を訪問すると、どこでもそんな話が出てきます。前回の記事でご紹介したウドゥ村の隣、メレ村を訪問した私たちに、ウムダ(村のリーダー)はやはり同じような話を始めました。

「村に井戸が1本しかない。乾期になると、他の村々からも大勢が水を汲みにやってきて、大変なことになる。順番待ちのポリタンクが何百個も並んで、長ければ3日待ちだ」

「3日待ち」が本当かどうか分かりませんが、ウムダの話しぶりからして相当な混雑なのは間違いないようです。

「どうして、ほかの村から水を汲みに来るのですか?ほかの村には井戸はないのですか?」と尋ねると、

「ない訳じゃない。井戸や水場はどこの村にもある。でも、乾期には水が涸れてしまうので、一年中いつでも水が出るこの村の井戸にやってくるんだ」

なるほど。それにしても、この村にはどうして1本しか井戸がないのでしょう?千人単位の村人が住んでいる、比較的大きな村です。

ウムダによれば「井戸は全部で11本ある。でも、使えるのは1本だけだ」

「ええっ!11本も?それが使えないなんて、一体、どうしちゃったんですか?」

というわけで、使えない井戸を、村人と一緒に1本ずつ確かめてみることにしました。(ちなみに、ここで「井戸」と呼んでいるのは機械で掘削した井戸のことです。伝統的な手掘りの井戸は「手掘り井戸」と呼ぶことにします)

最初に訪れたのは、村はずれの丘のふもと。ここには、2本の井戸がありました。2本とも使えないことになっていますが・・・1本はポンプから水が出ていて、女の子たちが水汲みをしています(写真左側)。「今は出ているけど、時々涸れてしまうんだ。だから、みんなあまりここは使っていない」というのが村人の説明。この井戸は昨年ユニセフ(国連児童基金)が提供したものだといいます。

もう1本の井戸(写真右側)はもっと古いもので、既に使われなくなってから相当の月日が経過していそうです。これが使えなくなったので、ユニセフがすぐ傍に別の井戸を設置したのでしょう。

ところで、この2本の井戸の近くには手掘りの井戸がたくさんあります。古くから、ここは地下水脈のある場所として知られていたようです。手掘り井戸の多くは既に埋められていましたが、そのうちの1本は今でも使われていました。覗きこんでみると、水面までの深さは5メートルといったところです。

豊かな地下水脈があるこの場所で、どうして機械掘削の井戸の水が涸れてしまうのか、私には事情がよく飲み込めませんでしたが、とりあえず次の井戸のある場所に向かいます。

手掘り井戸。ロープを付けたポリバケツで水を汲みあげる。手掘り井戸。ロープを付けたポリバケツで水を汲みあげる。

次の場所は、村の中心にある広場。ここに、一年中水が涸れないという1本の井戸があります。何人かの村人が水汲みをしていましたが、特に混雑している様子はありません。

「今は雨季だから大丈夫なのよ。雨が降れば、あちこちで水が取れるから」と教えてくれたのは、いつの間にか私たちについてきた村の小学6年生、ベティちゃん。英語小学校に通っている彼女は、英語をとても上手に話す上に、色々なことをよく知っているようです。

「あの丘の中腹に、女の人たちがたくさんいるのが見えるでしょ」えっ、言われるまで全然気がつきませんでしたが、目を凝らすと、うっすらと緑に覆われた岩だらけの丘に、女性たちのカラフルな服装が見えます。何をしているのでしょう?「あれはね、雨が降るとあそこに水が湧いてくるので、そこで洗濯をしているのよ」とベティちゃん。なるほど、雨季には井戸で水を汲まなくても、洗濯用の水は確保できる訳ですね。

ということで、広場にあるこの井戸は雨季の今はさほど混雑していないようですが、周囲を見回すと、何本もの掘ったままの井戸、放棄された井戸があるのに気付きました。その数5本。掘削した後、使用されずパイプだけが地面に突き出しているものや、使われていたらしいのですがコンクリートの土台を残してハンドポンプが撤去されたものもあります。「全部ユニセフが掘った」と村人は言いますが、どうして放棄されてしまったのでしょうか。

村の広場。左奥が稼働中の井戸。そのほか、写真手前を含め何本かの放棄された井戸が見える。村の広場。左奥が稼働中の井戸。そのほか、写真手前を含め何本かの放棄された井戸が見える。

何本かの井戸について案内役の村人は「パイプが脱落して使えなくなってしまった」と説明していました。「脱落した時にユニセフに連絡したけれども、何の返事もなかった」というのが彼らの言い分です。村人たちで修理はできなかったのかと尋ねると「修理の仕方なんて誰からも教わっていない」。

「こうしてポンプを押しても水が出ないの」とベティちゃん「こうしてポンプを押しても水が出ないの」とベティちゃん

さらに、そこから西へ5分ほど歩くと、ソルガム(モロコシ)の畑の中にハンドポンプが取りつけられたままの井戸がありました。ベティちゃんは「この井戸は去年までは使っていたのよ。でも、水が出なくなっちゃったの」と教えてくれました。

結局、この日は合計して11本の井戸(掘削だけされて使用されなかったものも含む)を確認し、そのうち稼働しているものは2本だけでした。その2本も、村人によれば通年で使えるのは1本だけということになります。これらの井戸を本当にユニセフが全部掘ったのか分かりませんが、なぜ故障した井戸が補修されず、次々に新しいものが掘られたのか?本当に村人は補修ができなかったのか?それとも地下水が枯渇したのか?はじめから深度が足りなかったのか?村人に尋ねても今ひとつ要領を得ません。

私は井戸に関してまったくの素人ですが、11本のうち2本しか使われていないのは異常に思えます。どうしてそうなってしまったのか、「11本の井戸の謎」について、今後も村を訪問して少しずつ話を聞いていきたいと思います。


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