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イラクの現地NGOが抱える活動資金のジレンマ 

イラク事業担当 原 文次郎
2012年5月22日 更新

「NCCI週報」とは

イラクの状況をウオッチするための情報のひとつとして、JVCも会員団体となっているNCCI(*)が援助関係者向けに発表しているWeekly E-Bulletin(NCCI週報)があります。

NCCI(NGO Coordination Committee for Iraq: イラクのためのNGO調整委員会)は35の国際NGO会員団体と27のイラク国内NGO会員団体、5つのオブザーバー団体から成るイラクのための人道支援調整ネットワーク団体である。

この週報ではほぼ1ヶ月に1回の割合で編集者オピニオン記事(新聞で言う社説に当たる)が更新されています。ここ最近の記事に興味深いものがありましたので2本の記事を日本語に翻訳の上、ご紹介します。

*添えられている写真はJVC撮影のものでNCCIとは直接の関係はありません
(記事翻訳責任: JVCイラク事業担当 原 文次郎)

今回の記事について:Local NGOs funding Dilemma
(NCCI Opinion Editorial April 03, 2012)

2012年をもって駐留米国軍が完全撤退をした後にイラクの状況が落ち着いてきているとのイメージが拡大する中で、人道支援分野で活動するNGOにとって資金獲得が課題となって来ています。この記事では特にイラクの現地ローカルNGOが資金獲得の上で抱える問題に焦点が当てられていますが、国際的なドナーからの資金提供が減少する中で、イラク政府と現地NGOの関係や、イラクで活動をする民間企業のCSR(企業の社会的責任)の観点からのNGOとの関係が述べられていて興味深いものがあります。

日本語訳:
「イラクの現地NGOが抱える活動資金のジレンマ」

2010年7月にICNL(International Center for Not-for Profit Law: 非営利法制のための国際センター)が発行した「市民社会組織を支援する政府基金」のレポートには、政府と市民社会組織の協力関係こそが、国の発展という共通のゴールを達成するためのカギになると述べられている。いくつかの国の政府系基金や財団の存在は、政府からの資金の供給源だとみなされているだけではなく、市民社会組織(CSOs)や非営利組織(NGOs)を、後者を前者の確立した形態として協力相手としていくことができる仕組みともみなされている。

しかしながら、イラクではこの協力関係をより強固にする必要がある。NGOも市民社会組織も、いくつかの団体は現在、例えば教育省などのように政府からの資金援助を受けているにも関わらず、最近イラク政府が承認した2012年の連邦一般予算の中では全く言及されていない。1000億米ドルにも上る予算は、イラク人の住宅購入目的や、農業分野をより活発にするための農業者に対するローン提供などを含み、社会的な便益をより高める目的のためにも使われる。しかしながら、CSOやNGOに対する具体的な資金援助については、全く述べられていない。

国際的な資金提供の減少

2003年、イラクに対する人道支援のための資金提供は34億ドルとピークに達した。それに対して、2008年のイラクにおける人道支援には、2003年の年間の資金提供額のたった9%(3160万ドル)しか割り当てられず、全般的な人道支援に対する資金の減少が露わになった。その上、EUのようなドナーによって大規模の無償資金援助が得られる「市民社会」の事業資金を除き、2008年以降、イラクにおける支援金分野は毎年確実に減少(2011年の年間資金額は最高であった2003年の額の3%)のパターンを続けている。

更に、2011年末に起きた外国軍の撤退の完了に引き続く人道支援の資金を続けるためのイラク駐留多国籍軍(MNF-I)の元のメンバー国の関与に関しての懸念もある。アメリカ合衆国は、2012年から3年間に渡って市民社会プロジェクトのための7500万ドルにものぼるUSAIDを通じた資金供与の機会を提供した。しかしながら、その案は提出された申請書のいずれかまたはどれにもにも資金を提供しない権利を留保しており、提供される資金の正確な額は未だに定義されていない。

イラクは依然として危険で不安定な状況にある。これにより現場へのアクセスは減少している。数百万人ものイラク人(UNHCRイラクによる帰還民の月間統計2011年11月版によると2003年以来150万人と見積もられている)がいまだに避難生活を送っており、健康、教育、下水設備、治安に関連した人道問題はイラク全体にまだ残っている。

イラクが中東の国々の中で3番目に大きな石油埋蔵量を持っているという状況にある一方で、油田の開発は現在、治安の不安定、汚職、投資の欠如、未熟な技術、そして多くの他の要因によって妨げられている。一方、推定で700万人(3000万人の総人口のうち)ものイラク人が1日に2ドル以下の生活をしているのだ。

イラクにおけるNGO法‐資金提供の方法

「2010年のNGO法12号」によると、同法の第13条は次のように述べている。NGOの資源は次の3で成り立っている:①メンバーの支払う会費、②内部または外部からの寄付金、遺贈、寄贈品、③団体の活動やプロジェクトからの収入である。 政府にイラクの市民社会組織を支援し維持するための資金割り当てを要望している多くのNGOとの議論が盛んになってきているにも関わらず、この法律の実情は変わっていない。

クルド自治政府はにおいては、ほんの少し前まで、他の地域とは違う状況下にあった。「2011年のイラクのクルド人地域におけるNGO法、13条4項によると、組織は「クルド人地域の年間予算の割り当て分に応じてその団体が受け取る資金と、団体のプロジェクト支援のために政府から支給される無償支援や補助金」から収入を得てもよいと述べられている。しかしながら、2011年の半ばにはこの支援は止められてしまった。現在は、新しい法律が審議中で、その法律のもとでは、クルド自治政府が信用を置くような計画を提案できるNGO団体のみに資金提供するという制限が加えられる見込みである。

バスラでは最近、失業問題を緩和するために小規模なローンを割り当てるという条例草案が作られた。現在、NCCIやバスラのいくつかの現地NGOは、「NGOはローンではなく補助金を必要としているのだ。」という考えを強調している一方で、現地NGOがそのようなローンにアクセスできることを保証するための働きかけをしている。バスラにおけるロビー活動は始まったばかりだ。:ロビー活動の結果についてはもっと後の段階でより詳しくわかってくるだろう。

ICNLのレポートは、「組織的な支援を提供するカギとなる理由は、政府の政策を実行する上で、効果的なパートナーとなり得るCSOの発展に投資することである。プロジェクトに基づいた支援を提供することにも利点がある。プロジェクトに基づいた支援は、政府がインパクトを持ちたい地域で具体的な結果をもたらし、同時にその地域にサービスを提供するCSOの経験と能力を強化できる。」と述べている。

イラクのNGOに対する政府の補助金をめぐっての議論は、どれほど人道支援の必要性と開発援助の優先事項に対して、NGOの活動が政府に操作されすに満たせるのかということを中心においている。

民間分野の役割

2012年3月13日、UNDP(国連開発計画)と(石油会社の)シェル社イラクは、イラク南部の広範囲にわたる開発プロジェクトの実施のための契約に署名した。4年間の協力関係は地域の開発のための活動の数を増やし、地元の中小企業をの活動を促進し、民間分野のニーズにこたえるための職業訓練を提供することを目的としている。

この協力関係は、UNDPによるグローバルコンパクトの地域ネットワーク支援の一環であるが、イラクでは昨年の10月に人権、労働基準、環境と汚職追放の各分野での責任あるビジネス慣行を促進するために作られたものだった。グローバルコンパクト、そしてこのような協力関係は、イラクで取引を行っている国際石油会社が、企業の社会的責任(CSR)の義務を果たすために役に立つ枠組みも提供している。

2012年2月にアルビルで開催されたNCCIのオープンスペースミーティングの間に、いくつかのイラクの地元NGOは、イラクの投資法に、投資家が地元のNGOを支援するためにいくらかの資金を割り当てる必要があるとする条文を入れるように働きかけをするようにと要望した。

他の国の例は、そのような方法を適用してある程度の成果を上げている様子を示している。ベトナムでは、特に国内中心部の多くのベトナム人が、彼らが住むコミュニティの繁栄を元に、この方法が成功だったと評価している。カナダの企業は彼らの周りのコミュニティを豊かにするのを手助けし、民間の非営利組織のリーダーと会うことによって、またコミュニティの人々が何を必要としているのか、彼らの個人的な希望は何か、彼らは自分たちの子孫のために何を求めているかを理解しようとすることによって企業の評判を高めてきた。これらの情報をもとに、カナダ企業は彼ら企業のプロジェクトが地元のコミュニティの希望に貢献していることを保証することができているのだ。

(記事日本語訳終わり)

イラクの現地NGOや現地の若者にインタビューを行うJVCスタッフ(2012年5月)イラクの現地NGOや現地の若者にインタビューを行うJVCスタッフ(2012年5月)
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