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クーレン山につながる池

CLEANプロジェクト担当 坂本 貴則
2012年5月 7日 更新

不思議な湧水

シェムリアップ県東部に位置するプレイトム村で暮らすプロム・メアチさんの農地には不思議と水が湧き出てくる池がある。池の大きさはそんなに大きくもなく、深くもない。毎日のようにこの池の水をくみ上げているが、どんなに水をくみ上げても、しばらくすると水かさが元に戻っている。村の人はそんな彼女の不思議な池を「クーレン山とつながっているのではないか」と言うそうだ。この村からクーレン山までは、直線距離にして50kmほどである。

クーレン山(カンボジア語で"ライチの山"の意味)はアンコール文化発祥の地とされ、多くの遺跡がこの山から切り出された石で造られた。また、クーレン山には、クバール・スピアン("橋の頭"という意味)という遺跡があり、有名な観光スポットとなっている。この遺跡は、川底や川辺の石に彫刻が彫られていることで知られており、水が豊かなクーレン山を象徴している。また、クーレン山は、アンコール遺跡群、シェムリアップ市内を通ってトンレサップ湖に注ぐシェムリアップ川の源流としても知られている。

カンボジアとシェムリアップ県の地図カンボジアとシェムリアップ県の地図

豊富な水を生かした乾季米

乾季米を生産するプロム・メアチさん乾季米を生産するプロム・メアチさん

プロム・メアチさんは、不思議な池の水を使って、3年前からコメの乾季作を始めた。カンボジアでは、大きく分けて雨季(5~10月ごろ)と乾季(11~4月ごろ)に分かれており、通常は、コメは雨季に1回作るだけである。「池の水があったのに、なぜ、3年前まで乾季にコメを作らなかったのか?」と聞いてみると、「コメを乾季にどうやって作ったらよいか分からなかった。」とのことであった。そして、3年前に乾季にコメを作るようになったきっかけは2つあるそうだ。

1つは、カンボジア政府から乾季米の種籾を配布し、乾季米の生産を奨励していたこと、もう1つは、JVCが実施したSRI(幼苗一本植え)の研修に参加したことだ。JVCの研修は、主に雨季のコメづくりについてであったが、苗床をしっかりと準備して田植えを行うという技術は、乾季のコメづくりにも活かすことができる、と気がついたそうだ。そして、発芽と苗づくりさえうまくいけば、乾季米も作れるのではないか、との思いに至ったとのことであった。

自分で作ったコメが食べられる!

順調に生育するメアチさんの乾季米順調に生育するメアチさんの乾季米

乾季米を作れるようになったことで、メアチさんの生活はとても楽になった。以前は前の年に借りていたコメ返すためにコメ作りをしていた。つまり、自分で作ったコメは借米の返済にあてていたのだ。通常、白米50kgを借りると、収穫後に籾付きのコメ200kg(白米にして約120kg)を返さなければならない。そのため彼女の家では、11月の収穫後コメの大部分を返済にあて、4月から翌年の11月頃までは、借米で生活を続けていたのだ。それが昨年は、借米を一切せずに、自分で収穫したコメだけで家族6人が食べることができた。

「自分のコメを一年間食べることができた。それがとても嬉しかった」と話してくれたメアチさんであるが、今年は2か月ほどコメが足りないかも知れないそうだ。というのも、昨年は家族で乾季のコメづくりに取り組んだが、今年は同じ村に住む親戚から「一緒にやらせて欲しい」とお願いされ、作業を手伝ってもらったため、収穫したコメを分けなければいけないそうだ。取り分が減ってしまうのは残念であるが、こうして近隣の人々もコメ作りに関心を持つようになってきている。

そして、生活にも変化が・・・

収穫を待つメアチさんの田んぼ収穫を待つメアチさんの田んぼ

メアチさんのように湧水で乾季にコメを作ることができる農家はほとんどない。実際に、彼女の田んぼの周囲には、乾いた砂漠のような田んぼが広がるだけだ。カンボジアの乾季はほとんど雨が降らない。常識的に考えれば、乾ききった灼熱の大地でコメを作ることは不可能だ。だが、メアチさんのお話を聞いて、これまでの習慣からできないと思っていることが、小さなきっかけで変えられる可能性があるのかもしれない、と感じた。こうした「きっかけづくり」こそが、大切であると思う。

最後に、メアチさんに「最近嬉しかったことは何ですか?」と聞いた。すると、一緒に住む義理の息子が、「借米もしなくて良くなったので、バイクを買おう」と提案し、そのバイクで、お寺まで連れて行ってくれるようになったことだそうだ。いつも、遠いお寺まで炎天下を徒歩で通うメアチさんを、日ごろから不憫に思っていたそうだ。コメ作りが家族の絆を深めるきっかけとなった。そのことを話しているメアチさんの顔は本当に嬉しそうだった。

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