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アフガニスタン現地報告(2011年5月)

JVCアフガニスタン保健アドバイザー 西 愛子
2011年6月 7日 更新

「現地報告」と言いながら、実は今回は隣国パキスタンでの会議のようすをご報告することになります。というのも、昨年5月の現地出張のあとも何回かアフガニスタン国内に入ることを試みてきたのですが、米軍による無人偵察機の誤爆への反感やタリバンの勢力の盛り返しなどいくつかの要素が重なり治安がなかなか安定せず、国内出張が実現できずに今日に至っています。そこで、パキスタンの首都イスラマバードにアフガニスタン人スタッフの主要メンバーを呼び、10日間の集中会議を行うことにしました。

ということで、今回は4月16日から25日までの10日間実施した集中会議のようすをご報告いたします。

集中会議の様子 【日程と参加者】 下表の色塗りの部分が参加を示します。集中会議の様子 【日程と参加者】 下表の色塗りの部分が参加を示します。

今回のイスラマバードでの会議は昨年10月に続き2回目となりました。1回目はアフガニスタン国内への渡航が直前で中止となったことから日程の調整がつかず、現地から参加したのは2名のみで、期間も5日間と最低限の会議となり、消化不良の思いが残ってしまいました。そこでその反省を踏まえ、会議を10日間の日程とし、できるだけ多くのスタッフに参加してもらうよう準備しました。それでもアフガニスタンの女性が単独で旅行することは許されず、女性の参加者は親族から同伴者を得ることができたファティマさんのみだったのが残念でした。

会議の様子会議の様子

【会議の概要と成果】 今回の主な目的は以下の3点でした。

1. 第2次中期計画の策定(2011年から4年間)

2. 2011年度年次計画の策定

3. 事業全体の進捗状況の確認

1.と2.に関しては3月半ばにアフガンスタッフ2名を招聘して東京で話し合う予定でした。しかしながら震災・原発の影響で中止せざるを得ず、改めてこの時期に話し合うことにしたものです。既に当該期間が始まっており、遅すぎた感もありますが、昨年後半よりメールやIT電話でのやりとりによって検討を重ねていたため、大きな変更もなく最終確認をする場となりました。

3.については3名の責任者に各事業の担当者を加えて話し合う形で進めました。最も大きな部門を占める医療事業は9名が会議に参加し、活発な意見交換が行われました。

ファミリーヘルスブックは村ごとに保管されているファミリーヘルスブックは村ごとに保管されている

医療事業の中で議論が最も集中したのは昨年度から導入したファミリーカードとヘルスブックでした。ファミリーカードは日本の診察券に、ヘルスブックはカルテに相当するものですが、個人ではなく家族全員が一枚のカードと一冊のノートを使う方式です。健康障害の背景には生活事情が大きく影響していることが多いため家族単位の受診状況が把握できるようにするためです。

これまでのところアフガニスタン保健省はカルテに関する方針を出しておらず、医療施設でカルテを導入しているところはわずかしかありません。私たちの診療所でも1年前までは1回限りの用紙に氏名と診断名、処方を記入するだけの方式で診療していたため、初診か再診かもわからない状態でした。

今は個人の受診歴がわかるだけでなく、村ごとの受診状況をデータとして集計しており、それを各村の保健委員会と話し合う材料としています。カルテから得られる情報は大きいのですが、現場で実際に運用する人たちにとっては大変な手間がかかるため、当初から導入を巡って賛否両論が続いています。今回は1年近い実践を経てその功罪を見直すことも会議の大きな論点になっていたため、“中止”という結論が出るのではないかと危惧していましたが、いくつかの難点を改善しつつ続行するという結論に至りました。

難点の一つは、他家のカードを持参する人たちがいるということでした。日本ではほとんどありえないことですが、

できるだけ多くの薬をもらうために必要以上に受診する人が少なくないのです。このようなカードの不正使用を防止する方策を保健委員会とともに検討するという課題を現地へ持ち帰ることで落ち着きました。

診察で患者のデータをファミリーヘルスブックに記載する医師診察で患者のデータをファミリーヘルスブックに記載する医師

もう一つは手間。受付がカードを基にノートを探し出し、次に医師がそのノートの中で受診者に該当するページを見つけ出す作業、診療終了後にまた所定の位置にもどすという作業は簡単なようですが、ゴレーク診療所では4時間程度の診療時間中に100名を超える受診者があるため大きな手間となります。

現場からはカルテの管理を担当するスタッフを追加採用するよう強く要請されているのですが、予算に余裕がないため既存スタッフでやりくりしながら曲がりなりにも運用できている状態です。受診者の少ないクズカシコート簡易診療所の方は問題なく活用されています。

新しいこととしては、これまでゴレーク村を除いて実施してきた母親教室をゴレーク村でも実施することが決まりました。母親教室は地域で核となってくれる人が必要なため、地域保健員のいないゴレーク村では実施が難しかったためです。何故ゴレーク村に地域保健員がいないのか?地域保健員制度は医療施設が近くにない村で応急的な治療行為をすることを目的としているため、診療所が存在するゴレーク村では不要と判断されているからです。

ゴレーク村ではこれまでずっと伝統産婆を支援してきましたが、昨年、お産以外の保健全般に関して指導員となれるよう研修を受けてもらいました。その中の優秀な5名にさらに指導者研修を受けてもらい、母親教室の核となってもらうことにしたのです。これで母親教室は13か所から18か所に増えることになります。これまでゴレーク村の衛生状態が他の地域より悪いと言われていましたが、新たな展開で改善につながると期待しています。

教育事業に関して特に目をひいたのは昨年から担当者となったアジマルさんの活躍ぶりです。事業規模が小さいのと現地での担当者が1人なのでこれまで全体で討議することは少なかったのですが、今回はアジマルさんに現状報告をしてもらったため、他のスタッフにも事業内容がよくわかり、医療事業との協働も明瞭になりました。彼の報告から彼自身が成長していることがわかり、日本人スタッフにとってうれしい驚きでした。

さらにワハーブ医師の発案で昨年から始めた中学校での「健康ジャーナル」に各学校とも関心が高く、これまで対象としていなかった女子校でも始めたいという要望がありました。「健康ジャーナル」とは各学校で毎月1枚の健康を題材にした壁新聞を作成するもので、原稿は生徒が投稿した作文をコンテスト形式で選びます。これによって生徒も教師も健康や衛生に関心を抱くようになったそうです。

雑感: 滞在中は計画以外の個人的な会談も入ります。たいていはアフガンスタッフが特に求めてくるのですが、内容は待遇改善や人間関係のこじれなどです。現地事務所は現在単独の所長に当たる人を配置していないため、もめごとは一刀両断という訳にいかず、人間関係に支障が生じるとなかなか解決が難しいようです。今回コミュニケーションがうまくいかなくなった2人が日本人を交えて直接話し合うことで和解したケースがありました。

地域保健責任者のワハーブ医師に表彰状を手渡す長谷部地域保健責任者のワハーブ医師に表彰状を手渡す長谷部

片やスタッフの業績を褒めるのも大きな役割で、今回は数名のスタッフに対して現地代表の長谷部が表彰状を渡しました。JVCでは余りなじみのない行為ですが、アフガンの文化では表彰が重要だということを知らされ、勤務態度が高く評価されたスタッフを表彰することにしたものです。

帰国直後に行われた現地スタッフ会議の議事録やワハーブ医師からの電話報告によると、スタッフ全体の意欲がとても高まっていることがはっきりとわかりました。イスラマバードでの熱い会議の成果でしょうか、それとも表彰状の効果???

食事の時間。右が西愛子。左が谷山由子食事の時間。右が西愛子。左が谷山由子

二度目のイスラマバード会議は季節外れの雨に迎えられ、初めは涼しかったのですが中盤から毎日気温が上がり、最後は38度という暑さでした。滞在したホテルは市場から遠く、食事のために片道20分以上歩く毎日でしたが、アフガニスタンと違い、“普通に歩ける“幸せを感じるひと時でした。

以上 文責 西 愛子

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