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アフガニスタン大統領選挙関連速報第三報(2)

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2004年10月12日 更新

<第二部 アフガニスタン選挙報告>

ジャララバードでの投票模様

ジャララバードで留守番をしているJVCスタッフのDr. ハヤトラとエンジニアのナザールに選挙当日の様子をレポートしてもらった。

Dr. ハヤトラはJVCに出勤する前に投票所で投票を済ませ、帰宅途中に他2箇所の投票所に寄って投票の模様を観察した。ハヤトラによれば投票に大きな混乱ななかった。人々は皆イードの祭りの時のように明るい表情をしていた。午前中に人々が集中したようで、3ヶ所の投票所は午後3時にはほぼ終わってしまったような状態だった。女性の参加者も多かった。

ハヤトラは投票の前夜、夫人に誰が立候補していて、それぞれがどんなバックグラウンドがあるかを説明し、誰を選ぶかは自分の意志で決めるように話した。ジャララバードでは女性も自分の意志で投票したと思う。ハヤトラ一家が投票したジュイハーフ地区の投票所の近くでは、カヌーニ陣営に雇われた女性が投票に向う女性にカヌーニに投票するよう働きかけているのを目撃した。ハヤトラによるとアフガンの女性は男に従うと言われているが、実際は口では男に従うように言っておいて心の中では自分の意志で行動しようと思っている。男に従ってきた結果がこの30年近くに及ぶ戦争だったと痛感しているからである。

ナザールもこの日事務所に行く前に投票に行った。場所はミヤ・オマル高校に設けられた投票所である。構内は8箇所、8教室が投票にあてがわれていた。ナザールによると、彼が一番驚いたのは投票所では皆が規則にしたがって一糸乱れずちゃんと2列に並んで投票を待っていたことである。ナザールはアフガニスタン人がこんなに規則正しく振舞っているのを生まれて初めて見た。そして自分が知る限り皆自分の意志にしたがって投票したと考えている。何人もの人に誰に投票したか聞いたが、皆カルザイに投票したと言っていた。誰に投票したかを他人にいうのを憚る風でもなかった。参加者の数はナザールが投票所にいた30分の間で200人はいたであろう。女性の参加者も多かった。彼の近所で女性が投票に行かなかった家はなかった。

投票に参加した人は嬉しそうだった。アフガニスタンで初めての選挙に参加したという喜びが表情に現われていた。ナザールの友人のジャーナリストが取材にいったガズニから帰ってきてナザールに次のように言った。この選挙でアフガン人が見せた熱意と規律を見て自分はアフガニスタンを誇りに思ったと。

投票所の管理については概ね問題はなかったが、一つだけ投票後に親指につけるインクのことで問題が持ち上がった。投票証明インクは3,4日は落ちないようになっているはずなのだが、インクが落ちてしまったとクレームをつける人が何人かいた。これでは投票をしたことの証明にならない。逆に言えば何度でも投票できることになってしまう。このことを候補者の一人アハマッド・シャー・アハマッドジアがいち早く公に批判した。彼はカルザイにこの選挙は無効だと言い立て、他の14人の候補者も同調したそうである。

ジャララバードではカヌーニ派の集会を開こうとした前ナンガルハル県教育局長が警察に締め出されるという事件が起きた。その他には今のところ選挙違反の例は聞いていない。ただ、自転車に乗った若者がカルザイの写真を掲げてカルザイの名前を連呼していたり、トラックの荷台に乗り込んだ連中が鳴り物入りでカルザイ支持のシュプレヒコールをしているのを見た。しかしこれらが選挙キャンペーンといえるかどうかはわからない(選挙法では選挙キャンペーンは投票の48時間前までと決められている)。

警戒はかなり厳重だった。ナザ−ルが行った投票所には8人の警察が詰めていた。トレーニングを受けた正規の国家警察(Afghan National Army)と軍閥から派遣された不正規の警察である。国家警察の方が人数は多かった。町中では、辻々を米軍がパトロールしていた。

人々が自由意志で投票したのか、それともコミュニティの決定に従ったのかと言う問題は重要である。ジャララバードでは多くの人が自由意志で投票したと思うが、農村部では分からない。例えば南東部のガルデーズやパクティアでは、選挙前に地域のシューラ(評議会)がカルザイ支持を決めていて、村人はその決定に従わなければいけないことになっているということを聞いた。父がホギャニ郡の自宅で投票しているのでホギャニの例を聞いてみる。JVCが女子学校を建設しているシギ村でもそれとなく聞いてみようと思う。

<第三部 結び 全体状況と若干の考察>

以上がジャララバードでの投票日の報告である。報告してくれた2人のアフガン人の熱が伝わったのか、話を聞き、この報告を書いていて私も自然と明るい気分になってきている。アフガニスタンの将来を楽観できないことには今も変わりはないが、それでも今は少し希望を見たような気がする。アフガニスタンも捨てたもんじゃない。

アフガンの人々が今回の選挙で勇気と熱意を示したことは疑いようがない。タリバンや武装グループの脅しにも関わらす、多くの人が投票所まで足を運んだ。全体としては投票に支障を来たすような襲撃や妨害は報道されていない。少なくともカブールなどの大都市ではそうだ。しかし、地方の遠隔地の実情は把握されていない。タリバンの発表では南部、南東部、東部41ヶ所で投票所や警察所を攻撃したという。真偽がわからないが、アフガンでは地方で起こったことが報じられないことが多いので、問題がなかったと結論を出すのは早すぎる。

今回の選挙は選挙プロセスを通して様々な問題がある。試みにそのいくつかを上げてみよう。

1. 独立選挙委員会がドスタムやムハキークなどの私兵を擁する軍閥に立候補資格を認めたのは選挙法に反しないか。

2. カルザイが他の公職にあった立候補者のように投票日75日前に公職を退かなかったことは選挙法に反しないか。あるいは選挙法の改正または選挙法に照らした司法の解釈がなされなかったことは、憲法に反しないか。

3. 9月以降の立候補者のメディアでの露出度比較調査では、カルザイが国政テレビで75%、国営ラジオで85%を占めている。この圧倒的な差は公職を利用した選挙活動とみなされないか。

4. アフガン国内の選挙登録者総数は想定されていた選挙人人口を100万人も上回り1050万人に達した。選挙人登録手続きに関しては、重複登録のケースが無数に報告されている。これは登録手続き上の不備ではないか。

5. 選挙票を、食料配給券が無料でもらえるとか薬の処方箋と誤解している人、秘密投票であることを知らない人、アフガニスタンで登録したらパキスタンで登録できないことを知らない人、そもそも選挙の意味が理解できていない人など様々なケースが伝えられている。選挙以前の問題として、選挙要員のトレーニングも含めて選挙教育が後回しになっていなかったか。

6. 選挙の前提とされていた10万人の軍閥私兵の100%武装解除という当初の目標は10月現在2割しか達成されていない(今年4月のベルリン会合での下方修正した目標に照らせば5割の達成率)。この国際公約違反は誰の責任か。人々を危険に晒し、「自由選挙」の信頼制そのものを損なう最大の要因であった軍閥の武装解除が達成されなかったのは誰の責任か、達成されないうちに選挙に走ったのは誰の責任か。

これらの多くの疑問の中で投票当日に混乱を引き起こしたのが4. の重複登録の問題である。当初選管当局(JEMB:Joint Electoral Management Body:国連と政府の合同機関)は重複登録のことは知りつつも選挙で重複投票できないようにすれば問題はないとたかを括っていたふしがある。実際問題として、住民登録もなくIDカードさえ持ってない人が多いアフガニスタンで重複登録を防止することは容易なことではない。ましてや選挙をもっと延期すべきだという国連やNGOの意見を押し切って政治判断で決められた選挙予定日に間に合わせようと、JEBMは信じられないようなスピードで登録人数を増やしていった。6月から8月と治安が最も悪化した時期にである。選挙登録に関わる多くのアフガン人が殺された。

投票当日は投票したものの左親指に特殊なインクをつけることで重複投票を防止できるはずであった。しかし、投票日にいくつかの投票所で普通のインクが使われていることが判明した。石鹸で洗えば落ちてしまうので、選挙票さえ複数持っていれば何度でも登録できる。アフガニスタンではパキスタンでの投票と違って国内であればどこでも投票してもいいことになっているので投票所に登録者名簿がないことも災いした。立候補者のアハマッド・シャー・アハマッドジアとアブドゥール・サター・シラットがこの問題を激しく糾弾して選挙のやり直しを訴えた。この問題は瞬く間に波及し、カルザイを除く候補者全員が選挙をボイコットする事態にまで発展した。

問題の糾明は選管当局に委ねられたが、この選挙が無効にならないとすれば開票結果を待つまでもなくカルザイが不戦勝になることが決まる。文字通り命賭けで投票所に赴いたアフガン人にとってこの結果は人を愚弄するもの以外の何ものでのないのであろう。選挙のやり直しなどできるはずがない。進むも退くもできない不本意な結末であることに変わりはない。責められるべきは誰なのか。この問題の原因は何なのか。ただ一つ言えることは、選挙をボイコットした候補者たちに非難の矛先が向く可能性がある中、彼らが選挙をボイコットするまでには数々の不満が蓄積されていたことも事実である。誰が大統領になるかとは別に選挙プロセス全体の検証がなくては人々の融和はありえないことを知るべきである。

第一報、第二報はこちら
 第三報(1)はこちら


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