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現地活動報告会を開催

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2004年9月16日 更新

9月11日にアフガニスタン現地代表谷山博史の帰国報告会を行いました。以下にその時の資料を掲載します。

2004年9月11日アフガニスタン帰国報告会資料(東京都文京シビックセンターにて開催)
 報告者:谷山博史/JVCアフガニスタン現地代表

全体状況

1. 治安
選挙プロセスに対する妨害
選挙プロセス、特に選挙登録の終盤に至って治安はとみに悪化している。6月には外国人援助関係者14人が殺害されている(MSF国際スタッフ3人、中国人建設労働者11人)。また選挙関係者や施設への襲撃が頻繁に起こっている。これまで安全とされていたジャララバード市内でも6月だけで立て続けに3件の爆弾事件が発生している。

中央政権に対する地方武装勢力の抵抗
最近の特徴は、選挙妨害のための選挙要員への攻撃、安全と思われていた北部での事件発生、地元の武装勢力による(と思われる)犯行など。また、ジャララバードでの治安の悪化が軍閥の領袖の一人であるグル・カリム警察長官のカルザイ大統領による更迭の直後から悪化したことで例示されるように、政権によるDDRや地方人事などを通した権限の強化に対する地元勢力の抵抗という性格も帯びているようである。

2. 国政選挙と武装解除(DDR)
・6月予定の大統領選挙と議会選挙の延期。大統領選挙(10月7日)と議会選挙(2005年4月or5月)の分離。
・選挙人登録の遅延と6月以降の急激な進展 重複登録の疑い。
・政府の選挙プロセスに対する批判
 −カルザイべったりの選挙管理委員会
 −カルザイによる現職権限を選挙対策に利用
 −イスラム運動(ジュンビッシュ・イスラミ)の軍閥ドスタムの立候補を選挙管理委員会が承認
・DDRの遅延
 ―前提武装解除、動員解除の初期目標10万人達成不可能⇒ベルリン会議で40%に下方修正⇒9月初めの段階で14,301名。
  国防省提出データのAMF10万人の信憑性。Private Militia(独立民兵)に流れているのではないか。(武装勢力の種類 1. AMF:地方軍閥所属の兵士 2. Private Militia 3. 盗賊 4. 武装一般民 DDRはAMFを対象としている)
 ―大統領選挙の前提としての「自由で公正な選挙のための条件としての武装解除」が満たされることなく選挙が実施される。選挙時期について当初国連は反対。アメリカ政府のプレッシャー。NGOの批判。
 ―日本政府の実施能力の問題。米軍の非協力的とダブルスタンダード(Private Militiaの利用)。
・立候補者の談合(?)
カルザイによる北部同盟の有力者であるイスラム協会のカヌーニ候補、ジュンビッシュのドスタム候補との政治取引。選挙後の政府ポストを約束したのではないかと不信感が広まることの悪影響。
・選挙監視の難しさ。欧州安全保障協力機構(OSCE)は、監視員をアフガニスタンに送らず小規模の「選挙支援チーム」を派遣し、選挙プロセスに関する詳細な勧告を含む報告書を提出する予定。

3. 軍と人道援助
・バグディース県においてMSFの国際スタッフ3名、アフガンスタッフ1名襲撃され死亡。MSFはアフガンからの撤退を表明。声明において人道援助を軍事目的で利用する米軍を批判。
・7月、在アフガン米軍司令官による「NGOも武装したエスコートを用いるべきだ」との発言に対して、ACBAR、ANSO、CAREが文書で批判。人道援助の中立的なスペースがますます狭められていくことに、懸念。
・アフガニスタンでの軍事オペレーションは民間人と軍の活動との境目をあいまいにしており、そのことがNGOの活動に対する脅威を増加させる直接の原因であると明記した公式文書に、34のNGOの団体がサインをした。(ReliefWeb)

治安悪化の要因

・反米・反政府活動:反米・反政府から援助団体・外国人・外国人の協力者への襲撃対象の拡大。NGO=米軍の手先。NGOの協力者への見せしめ。
・対「テロ」戦争:繰り返される米軍の「誤爆」、家宅捜査、不法逮捕、密告。米軍による軍閥の利用、軍閥の跋扈。利用した軍閥の切り捨てと軍閥のゲリラ化。
・軍閥同士の衝突:軍閥の勢力争い、戦闘に巻き込まれる犠牲者、反対派に対する「テロ」
・人権侵害:地方ボスによる恣意的な徴収・逮捕・監禁、「女性」に絡む脅迫等
・麻薬の栽培と取引:拡大するケシ栽培、麻薬撲滅キャンペーンと強制撤去、農民の反発と地域の不安定化、軍閥の麻薬取引への関与、農民の将来への不安。
・住民同士の反目:土地争い。遊牧民と農民。村落内での反目と疑心暗鬼。
*地方軍閥の影響力誇示:自作自演の「治安の脅威」
*NGOに対する住民、役人の不信:バダクシャン県での反NGOデモ。計画大臣のNGO批判。各地でのNGOに対する脅迫状。

なぜ状況がここまで悪化してしまったのか

DDRは、アフガン人の誰に聞いてももっとも優先順位の高い課題だといいます。一般のアフガンの人たちが希求している事柄だといってもいいでしょう。一方でこの問題は本当に難しく、当初から成功するとはどうしても考えられなかったのです。成功するシナリオというものが描けていないのです。

軍閥どもが非協力的だということはネックになりません。つまり軍閥は力で押さえ込まないかぎり、自分から自分の権力と権益を放棄することはありえないことは初めから分かっていたからです。それを前提にDDRは考えられていたはずです。ところが見ていると、 DDRはそもそもが茶番だったのかもしれないと思わざるを得ません。国際社会の所謂政策決定者は無理なことを大丈夫だといいつづけて、形ばかりを取り繕ってきた結果、選挙直前になってボロを覆い隠せなくなったように見えます。

カルザイを国民選出の初の大統領に立て、アフガンの民主化が里程標をクリアーしたことにする上で最も大きな難題は治安でした。治安が悪くなれば選挙ができなくなるからです。以前のメールで送ったように、この懸念を払拭するために、応急処置としてとったのが、地方軍閥に県知事や警察長官の正式なポストを与えることでした。武装解除の対象であったナンガルハルのハズラット・アリを警察長官に任命し、ドスタムと対立を繰り返していた(また地域のイスラム協会の中でも軋轢のあった)マザリのアッタ・モハマッドを県知事につけたのはこのこういうコンテキストがあったとみています。

DDRと軍閥指導者の地方有力ポストへの任命、そして米軍の軍閥の利用は互いに矛盾しあってDDRを骨抜きのものにしていまっているのです。

DDRは2,3年では達成できないという前提で考える必要があります。振り返れば、現政権ができる過程で国際社会は重大なミスを3度犯しています。
1. タリバンを力でつぶして新政権を立てようとしたこと。タリバンが国際合意の当事者に組み入れなかった(られなかった)こと。
2. 北部同盟にカブール入城を許したこと。
3. ボン会議で合意に違反した者の処罰規定と処罰を実行できる仕組みを作らなかったこと。

それと付け加えれば米軍のダブルスタンダードを国際社会が見逃しつづけたこと。

ここまで状況が悪化してしまっては、大局的に考えて方法は2つしかありません。
1. 有力軍閥の実行支配を暫定的に容認し、地方のセキュリティの責任を正式に負わせること。その間にごろつきのような地方軍閥を一つ一つつぶして、カブールの実行支配を徐々に強化していくこと。中央政府の力がつくにしたがって有力軍閥を解体していくこと。10年の謀略が必要ということになります。
2. IFAFを強化して、国連の決議のもとに武装解除と治安維持の責任をもたせること。

妥協策として考えられるのは、田中浩一郎氏が言っていたように、ボン第2会議を国連が招集し、ボン会議の合意の確認と罰則規定及び罰則の実行力を備えて、違反者を国際社会の監視のもとで一つ一つつぶしていくこと。

何れにしても状況をここまで放置してしまった国際社会の覚悟と長期的なコミットメントがなくてはできないことです。

JVC活動状況概略

ジャララバード市内で爆弾事件、ナンガルハル郡部での選挙要員に対する度重なる襲撃、クナール県でのミッション中止勧告など、治安状況の悪化に伴い、活動現場への訪問は大きな制約を受けた。特に6月ジャララバードで起きた3回の大きな爆弾事件では、その度にUN、ANSOから自宅待機勧告が出たために、事務所に篭る日が多かった。(ちなみに、現在のジャララバードの状況は落ち着いている)。またクナール県では全地域でUNはミッション中止を勧告。国際NGOはUNの勧告を参考にしながらも、独自の状況判断で行動している。カス・クナールのクリニックにはアフガン人スタッフの医師と薬剤師、エンジニアが訪問、活動している。

行政面で、中央省庁によるナショナル・プログラムが策定されているが、現実には、今だに中央の計画と地方の現実のギャップは大きい。

・学校建設:1. 教育省によるNGO許可の見直し、省内の担当部局の混乱 2. 他県での例、県の許可で建設実施 3. JVCのケース、県レベルのみでの許可だが省の査察ミッションはこれを評価。
 ・保健省のコントラクト・アウト(委託事業):東部地域はEUのプロセスが遅れ、クナール県実施NGOの決定は来年半ばに見込み。EUのコントラクト・アウトが始まって丸2年現場での新規支援が始められない状態。一方、ナンガルハルでは、EUとは関係なく県の主導でクリニック建設が進む。

医療
カス・クナールクリニック支援に関しては8月までに、上半期予定の機材支援と薬剤支援、内部設備の修復などを予定通り実施した。資機材支援のほか処方箋の書き方、疾病記録、月例報告書の作成など、クリニックの情報管理全般に亘って実地実務研修を施すことができた。7月に行われたクナール県保健局による県内20のクリニックの評価で、カスクナール・クリニックが最優秀クリニックに選ばれた。(昨年中位)

TBA支援に関しては、5月にシェワ郡グレーク集合村で13人のTBAを対象にイニシアル・トレーニングを実施、8月にはホギャニ郡メムラとゴシュタ郡のホアジおよびアル・へ-ル集合村でリフレッシャートレーニングを実施した。

学校支援
5月からシギ女子学校の建設を開始、現在外壁の建設終了、ほぼ70%。完成予定は10月半ば。同時に着工した郡教育事務所の建設も同時期に完成予定。県教育局および教育省から度々の視察があった。何れの場合も査察官から建設の質を高く評価された。

<略語>
ACBAR:The Agency Coordinating Body for Afghan Relief (ACBAR) アフガニスタンで活動する95の国内・国際NGOの調整団体。
AMF:Afghanistan Militia Force アフガニスタン民兵軍
ANSO:Afghan NGO Security Organiaztion アフガニスタンNGO治安情報機関
DDR:Disarmaments Demobilization and Reintegration 武装解除・兵員削減・社会復帰プログラム
MSF:Medecins Sans Frontieres 国境なき医師団
TBA:Traditional Birth Attendant 伝統産婆

2004年4月12日アフガニスタン南部カンダハール県で米軍が空から撒いたビラ

Providing information about the Taliban and al Qaeda was necessary if you wanted the delivery of aid to continue.
「もし引き続き支援がほしければ、タリバンやアルカイダに関する情報を提供するように」

<これに対するMSF(国境なき医師団)声明文のポイント要約>
人道支援関係者に対する攻撃は、人道援助をテロ掃討作戦や政治のかけひきに一貫して利用してきた米軍主導の連合軍のやり方に連動して発生している。MSFは、連合軍が人道援助を軍事作戦に組み込んだり人びとの心をつかむために利用したりすることを非難してきた。連合軍のこのようなやり方は、人道援助の中立性・公平性を失わせ、現場で人道援助を進めているNGOスタッフが危険にさらされるようになり、人びとが必要としている援助そのものの実施を危うくする。2004年5月12日、MSFは連合軍が配布したちらし(上記)を公然と非難した。

人道援助は、(軍隊を含め)武器を持つ人々が人道援助に携わる人びとの安全に対する配慮があってはじめて実現する。2003年初頭から今までに30人以上の人道援助関係者が犠牲になった。


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