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現地の治安を撹乱するアメリカ軍の存在

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2003年1月30日 更新

報復攻撃の悪循環

米軍のクナールでの軍事作戦が急展開している模様です。クナール県は私たちが駐在しているナンガルハル県の北に位置し、東側はパキスタンと国境を接しています。ここ数日戦闘機やヘリコプターの飛来、装甲車やジープの行き来が常に増してあわただしい。米軍の軍事作戦はここに来てどろ沼にはまっているように見えます。米軍がアルカイーダやタリバン残党の掃討作戦で村人の家宅捜索をする、このやり方にパシュトゥーンの反感が高まる、米軍が正体不明のグループの攻撃を受ける、その度に米軍が報復攻撃を仕掛け一般民に被害者が出る、そしてまた反感が高まるという悪循環が続いています。(注)

アメリカの新戦略

アメリカはアルカイーダやタリバンの掃討作戦が一向に成果が上がらないため今大きく方針を転換することになりました。これまでは米軍はアフガニスタンの治安には関与せず、掃討作戦にのみ力を注いでいました。しかし、昨年の夏頃から復興が進まない限り米軍の軍事作戦の目的も達成できないという認識がペンタゴン幹部の間で芽生えてきたといいます。今後は地方での軍閥間の抗争や、頻発する犯罪を監視するのみならず、米軍自らが人道援助を調整したり実施したりするようになります。

アメリカは新戦略において軍事作戦と人道援助の調整を任務とするJoint Regional Team (JRT)を全国8箇所及びそれ以上の個所に設置する計画です。これはイラク攻撃を睨んで、ペンタゴンが軍事と復興を統括的に進める方式のモデルとして立案されました。この背景には、どうやら日本でのGHQの経験が生かせるというペンタゴンの一部幹部の発想がある可能性もあります。アフガンで政権が不安定になると、イラク攻撃も足を掬われかねないのです。

新戦略に対するNGOの批判

これに対して、アフガニタンのNGOの連合体であるACBARは12月初め緊急アッピールを出してこのJRTプランを批判しました。この作戦は人道援助の中立性を損ない、地元民が軍事と援助を混同しかねないために、NGO活動が攻撃の対象になりかねないとアッピール文で訴えています。また別のNGOは米軍による人道援助は米国シンパの軍閥や村が援助対象になりかねないため地域の亀裂を助長すると批判しています。米軍と地方の軍閥との関係が強まり、中央政府の影響力がますます低下するという批判もあります。一方でEUのアフガニスタン代表のフランシス・ベンドレルは、復興援助は多国間援助の枠組みでなされるべきで、だからこそISAFが(治安維持)のために必要なのだ、と米軍による復興援助と治安維持の両方を批判しています。

NGOを騙るCIA

CIAはただでさえNGOを危険に晒す活動を臆面もなくやっています。12月初め NGOのメディカルチームを名乗る人間が、以前ヘクマチアル(急進イスラム主義グループ イスラム党の党首。抗米ジハードを訴えている)の将軍だったアジ・ガフールをヌーリスタン県(クナール県の北)パルーンの自宅で暗殺しようとしました。ガフールに医者を装って近づき毒物注射で殺そうとしたのです。それを悟ったガフールは逃げましたが、この暗殺団の連絡を受けた米軍がガフールの家を包囲して銃撃戦になりました。その後地元民は暗殺団のこの行為を怒り、暗殺団NGOが乗り捨てた車2台を焼き払いました。ヌーリスタンはこれまで治安がよかったのですが、米軍の関与が治安を悪化させることになりかねません。

クナール県やパクティア県は白人には極めて危険です。1月6日に妻の由子が保健省のDr.Asefと DED(ドイツの JICA)のトーマス、 SERVE(NGO)のクリスティン3人とともにヌーリスタンに行く予定にしていましたが、UNAMA(UN Assistance Mission for Afghanistan)はこの地方出張に許可を出しませんでした。UN本部から旅行を控えるようにとの指令があったとも聞きます。治安の問題という以上に、クナールなど東部地域の軍事作戦が急を要している気配が感じられます。

【注】クナール、パクティアでの米軍の作戦

米軍の存在にアフガン人は日増しに反発を強めている。正確にはパシュトゥーン人の反発が日増しに高まっていると言った方がいいのかもしれない。米軍の行動はパキスタンと国境を接してる東部と南東部に集中している。その中心はパクティア県、ナンガルハル県、クナール県である。これらの地域では、 F15やB52による空爆や米特殊部隊による各戸ごとの捜索が行われているのだが、米軍の捜索の仕方がパシュトゥーンの誇りを傷つけるあまりにも無思慮なものであるために、米軍の作戦の行われている地域ではパシュトゥーンとの亀裂が新たな緊張を生んでいる。

昨年9月パクティア県コーストで起こったアフガン女性による米兵射殺事件は一つの象徴的な事件として記憶されていい。アル・カイーダとタリバンの捜索のためにコースト近郊の村を回っていた米軍が男性が不在で女ばかりの家に侵入し、女性のベールを一人一人めくって顔を改めていたとき、若い女性が銃で米兵を2人撃ち殺した。パシュトゥーンにとって、家主の同意なしに家に入り込むというのは許しがたい侮辱行為である。加えてこの場合女性だけの家に侵入し、顔を隠そうとする女性のベールを力ずくではがした。外部の男に女性が顔を曝すことは恥辱とみなされているのである。さらにこれには後日談がある。米兵を射殺した女性の引渡しを村人が拒んだために米軍は F14と B52を差し向けて攻撃したというのである。米軍による各戸別の強制捜索に対しての抗議の声は現在米軍の掃討作戦の焦点になっているクナール県でも高まっている。昨年の10月クナール県での反米デモがあった。このデモは米軍の高圧的な態度、プライバシーの侵害、不当逮捕、地域政治への介入を批判するものであった。

1月の初めには米軍がロケット弾の攻撃を受けた報復としてクナール県の国境の町マラワラ・ショレックとナウアバードを空爆したというニュースがパキスタン紙「フロンティア・ポスト」で報道された。米軍の掃討作戦は、地元の対立勢力の一方のたれ込みや北部同盟からの情報をよりどころにしているところがある。アル・カイーダと名指しされたものは米軍の攻撃の対象になるという密告政治が、アフガニスタンの軍閥間の疑心暗鬼を煽る結果になっている。フロンティア・ポストは米軍の攻撃を受けた地元民の発言として次
のようなコメントを載せている。

「連合軍の女性へのボディーチェックはアフガンの女性への侮辱である。ムスリムでありパシュトゥーである自分たちアフガン女性の名誉のためには命を捨てる覚悟だ。」

「クナールにはアルカイーダはいないし、パシュトゥーンはアル・カイーダではない。誰かがアメリカ軍をけしかけてパシュトゥーを攻撃させている。アメリカがこんなやり方をやめなければ問題が大きくなるだけだ。」 


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