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ODA ウォッチ: プロサバンナ事業 第21回

「官民連携」における ビジネスの責任をどう問うのか

地域開発グループマネージャー/南アフリカ事業担当 渡辺 直子
2018年2月13日 更新
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日本がモザンビーク北部で注力する事業はプロサバンナだけではない。北部5州(ナンプーラ、ニアサ、ザンベジア、カーボデルガド、テテ)で行われる「ナカラ回廊開発」があり、農業開発事業・プロサバンナはこれに包摂されている(注1)。
今回はこのナカラ回廊開発における「鉄道整備・港湾事業」について、そしてJICAではなくJBIC(国際協力銀行)による企業融資について取り上げる。

「植民地時代より悪い」開発

2017年11月28日、JBICは、民間銀行団とともに、三井物産とブラジル資源大手Valeがモザンビーク北部で実施する鉄道・港湾開発に対し、総額27・3億ドル(約3080億円)の協調融資を行うことを決定した(注2)。このうち約10 ・3億ドル(1163億円)がJBICから融資され、併せて日本貿易保険による1000億円規模の「保険引き受け」も発表されている。いずれも公的資金、すなわち我々の税金から拠出される。

ナカラ回廊開発のコンセプトは、①内陸や沿岸部で資源開発、植林および農業開発を行い、②その運搬(輸出)のためのインフラ整備として先の鉄道・港湾整備ならびに道路整備を行う、というものだ。広範なバリューチェーン(物流網)の構築による経済成長が謳われるが、JBICの融資決定にあたっては「日本の鉱物資源の確保および安定供給を支援」と説明されている。資源を外へ外へと出す「植民地」型の事業だ。

実は、14年頃より、この鉄道整備事業に対する懸念の声が現地から届けられていた。14年の調査時には、整備事業によりそれまでの旅客車が石炭を運ぶ貨物車へと変わり、人々が生活の足を失いつつあった。それでも駅周辺は人の往来が多く、農産物を売りに来た農民や乗客の間の売買で非常ににぎわっていた。これが16年になると、状況が劇的に悪化していた。①旅客車がさらに減り、駅周辺が閑散として農民らのマーケットが失われた、②線路が地面から3mほど掘られて敷設されており、それに陸橋が渡されないために救急車が通れなくなる、線路を徒歩で横断する際に転落死亡事故が発生している、③強制立ち退きにあい、補償のないまま住居や農地を失う農民が少なからず発生、などである(注3)。現地の人々が「植民地時代より悪い」ともらしていたことが印象に残っている。

環境影響評価は企業のもの?

その直後の16年11月、JBICが同鉄道・整備事業に掛かる環境影響評価(EIA)を終え、融資決定を検討しているとの情報が入り、私たちは本件に関する財務省・JBICとの協議を開始した。そこでは、現地の被害状況を共有、日本政府としての対応を尋ねるとともにEIA英語版の共有を求めてきた(注4)。これに対しては、「補償は支払われている」「被害への対応はなされている」との説明が繰り返されてきた(全長912㎞のうち「影響が大きいと判断した」88ヵ所だけだが)。しかし、88ヵ所の具体的な場所や対応内容の情報はいまだ公表されていない。それどころか、EIA英訳版は「企業のものだから」企業側と交渉するよう言われ、その結果、三井物産からは、こちらが英訳版をどこかで引用して使えば即座に訴えられかねない内容の守秘義務契約が一方的に送られてきた。同事業にはJBICを通じて多額の税金が投じられているのに、なぜEIAの翻訳が企業の所有物とされるのか。そんな論理で情報の秘匿が許されていいのか。そして、これらの協議が継続され、現地の被害回復が確認されないなか、今日のJBICの融資が決定したのである。

「ビジネスと人権」を問う

今、かつて「人々」のためだったはずの援助は、「貿易」「投資」のためだと堂々と謳われ、官民連携の掛け声のもと、投資促進のためとして巨額の税金が企業につぎこまれている。だが「現地に経済成長をもたらす」とされる開発の実態は、先に見てきたとおりだ。そして農民たちは、自分たちのささやかな暮らしを守るために闘うことを強いられている。

確かに、私たちの暮らしに企業の存在は欠かせないだろう。しかし世界中のどこかで暮らす人たちに、こんな犠牲を強いるやり方は許されるべきではない。

こうした中、国際的にはこんな動きも始まっている。国連人権委員会では11年に「ビジネスと人権に関する指導原則」が承認され、現在は「多国籍企業の人権侵害を規制するための新たな国際条約」について協議されている。一方で、17年3月、国連に「小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言」が提出され、採択に向けて協議が継続されている。本稿で述べたモザンビークの一例は、国際的な流れと連動し、世界で共通した課題が見られるということだ。

答えは簡単には出ないけれど、どんな世界を作っていきたいのか。私たちがひとりひとり考え「続ける」必要がある。そしてJVCとしても、ODAの枠を超えて「ビジネスと人権」に目を向け、動き始めていく必要性を痛感している。

※注(1)2011年、JICAが「ナカラ回廊経済開発戦略策定プロジェクト(PEDEC-Nacala)」を立ち上げ、2016年12月に、そのマスタープランが公表されている。http://ngo-jvc.info/2mFmQzlhttp://ngo-jvc.info/2r1Icexhttp://ngo-jvc.info/2FzH1Xf

※注(2)JIBCサイトより。http://ngo-jvc.info/2mCiSaq

※注(3)現地市民社会組織によるビデオ(http://ngo-jvc.info/2r1K8DP)、渡辺調査報告書(http://ngo-jvc.info/2EGebm)など

※注(4)事業対象国の言語=ポルトガル語版のみ公表されている(http://ngo-jvc.info/2Dv2FuT)。

No.329 400万人。人口の3分の1が今も恐怖と不安のなかで生きている (2018年1月20日発行) に掲載】

※後日、掲載年月別一覧を用意します。

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