
日本国際ボランティアセンター(JVC)
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米軍増派という米国の対イラク新政策の
発表に際して〜さらなる衝突の激化を懸念〜
2007年1月10日(米国現地時間)、ブッシュ米大統領は、
イラクに対する新しい政策として米軍約2万人を増派する方針であることを発表し
ました。私たちは、この新方針に強い懸念を感じています。
イラクの治安状況は悪化の一途をたどっています(*1)。武力衝突や爆
弾事件などで直接的に被害を受けなくても、私たちが支援を続けている
病院において必要な医薬品の供給が不足して、充分な治療を得られない
など、不特定多数の一般市民が大きな影響を受けています 。この状況
に至った背景には、ブッシュ大統領が自ら認めているように、米軍主導
による杜撰な復興計画と過剰な武力の行使を伴う治安活動があります。
この事実を踏まえたときに、米軍の増派という新方針が、「内戦」とま
で言われるほどの緊急状況に対して、一時期的な、それも極めて短期的
な沈静化をもたらすことができたとしても、根本的な問題の解決になら
ないばかりか、武力鎮圧に伴う市民の犠牲の増加によって、権力闘争や
利害対立に由来する様々な対立軸上での衝突の激化と複雑化を招いてし
まう恐れがあります。
ブッシュ大統領は「責任をとる」という発言をしましたが、正当性を
欠いた戦争を始めた国々が取るべき「責任」とは、新たなる対立激化の
火種をまき散らすことではなく、複雑化する武力衝突の連鎖を止めさせ、
すべてのイラク国民とすべての周辺国の協力を仰ぎながら、どのように
地域の人々の間で和解の枠組みをつくるかを考えるべきではないでしょ
うか。
開戦以前からイラク市民に対し人道支援を行ってきた私たちは、今回
の新方針によって、武力衝突が増え、更に人道上のニーズが増加してい
く可能性が高くなることを懸念しています。またその一方で、人道支援
が実施可能な領域さえ縮減していくことを強く憂慮します。対テロ戦争
あるいは中東の民主化と呼ばれる戦争目的に対する「付随的被害」とい
う言葉で済ますには、あまりにも多くのイラク市民の命が失われました
(*2)。イラクを逃れる難民の数も増加しています(*3)。イラク人から既
に根深い反感を買っている米軍の更なる投入は、武力対決の姿勢を強化
させるばかりで、和解の可能性を小さくさせ、根本的な問題の解決を遠
のかせます。大国の思惑のために始めた戦争を、大国の名誉を優先させ
て決着を付けるような方策は、人道の観点から道徳的、倫理的に許され
るものではありません。
今回の米国のイラク新方針の発表と実施によって、イラク情勢がどの
ような展開をするのか予断を許しません。私たちJVCは、状況に関わら
ず恒常的な支援を必要としているイラクの白血病の子どもたちの支援を
続けるとともに、市民の人道ニーズに応えるべく体制を整え、緊急支援
活動を行っていきます。また、イラクで何が起こっているかを市民の視
点から見つめ続け、日本社会に発信を続けていきます。そして、少しで
も早く安心した生活がイラクの人々に戻るよう、日本政府を始め国際社
会に対し、責任ある形で適切な対応をとるよう政策提言活動を行ってい
きます。
<脚注>
*1:調査報告書「イラクにおける小児ガン治療機関での医薬品供給状況」 (2006年11月18日、JVC)参照
*2:2003年3月の開戦以来、死亡したイラク人の数=約65万5千人( 「ランセット」英医学雑誌報告による推計)
*3:UNHCRが周辺国に逃れる難民支援のために6000万ドルの 緊急アピー ルを発表(2007年1月8日)。
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