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政府にイラク支援策の包括的な 見直しを提言 
2006年12月19日 更新
 

日本国際ボランティアセンター(JVC)

JVCとJIM−NET(日本イラク医療支援ネットワーク) は、「イラク緊急事態に際し、日本のイラク支援を包括的に見直すことを要望します」と題する提言書を12月18日朝に日本政府に提出しました。
JVC代表理事の谷山博史、JVC理事の熊岡路矢、JVCイラク担当の原文次郎、JIM−NET より事務局長の佐藤真紀の4名が外務省を訪問し、午前11時半過ぎより約30分間に渡り、 岩屋毅(いわやたけし)外務副大臣と面談し、外務大臣宛の提言書を手渡しました。
この申し入れに対して、岩屋外務副大臣は、NGOからの要望を受け止め、大臣に報告すると 答えられ、また、イラク戦争への協力も含めて日本政府のイラク政策の検証と見直しが必要などのNGOからの意見に対し、「国際社会全体の教訓だ」と慎重な表現で答えています。
JVCは2004年10月に東京で開催された、イラク復興支援信託基金ドナー委員会会合及び拡大会合(東京会合)に際し、要望書を提出 しています。
それから更に2年が経過し、また、2005年12月15日イラク議会選挙が行われてからも1年が経過するものの、イラクの現状は改善の兆しを見せるどころか悪化する一方です。
 一方、日本政府は、2003年10月マドリッドで開催のイラク復興国際会議で50億ドルの支援を表明し、復興支援を行ってきました。日本政府は今後35億ドルの借款を想定していますが、現状は日本政府がシナリオとしてきた「復興」の段階ではなく「緊急」の状態と私たちNGOは認識しています。 しかし、イラクの緊急状況を反映した支援策を日本政府はいまだ提示していません。
私たちNGOは、イラクへの支援活動の経験を元にした現場からの声や調査結果を踏まえて、 今回の提言により、正当性を欠いた戦争とその後の順調な復興という現状認識の見直しを問い、支援の具体策として緊急支援の枠組みで以下の通りイラクに対する医薬品支援・難民支援を訴えています。


                              

2006年12月18日

外務大臣  麻生太郎殿

イラク緊急事態に際し、日本のイラク支援を包括的に
見直すことを要望します

2003年3月国連決議のないまま始まったイラクへの米国による武力介入は、イラクの人々に困難な生活を強いることとなりましたが、私たちは正当性を欠いた武力による他の主権国への介入とその後の軍事占領による「復興」はイラクの人々の困難を解決しないと一貫して主張してきました。
 無謀な武力介入から既に4年が経とうとしている現在、イラクの治安は悪化の一途を辿り、医薬品の提供や教育といった基本的ヒューマン・ニーズは高まるばかりです。

報道によれば、毎月約3000人以上が死亡し、二次被害も含めれば2003年3月の開戦以降、約65万人のイラク人が命を落としたとも言われています。私たちNGOは、こうした悪化する治安の中で限界を感じながらも、イラクの市民や国際協力NGOと協力しながら医療や教育の支援を続けてきました。病院で使用される医薬品のほとんどは、こうしたNGOからの支援によるものです。
  日本は、これまでイラクに対する明確なビジョンを欠いたまま、米国の武力介入に協力し、その後の「復興」においても多額のODA供与と自衛隊派遣を続けてきました。

2003年10月マドリッドで行われた「イラク復興国際会議」において日本政府は50億ドルの無償・有償資金協力を約束し、現在までにその一部が実施されてきましたが、イラクの人々の暮らしは一向に改善される兆しを見せていません。
 私たちは、日本政府のイラク支援策を包括的に見直す必要があるのではないかと考えています。理由は、二つあります。一つは、現在のイラクの状況をしっかりと把握して計画を見直す必要があるということ。特に、「内戦」という緊急的な状況の中にあって、いかに効果的に基本的ヒューマン・ニーズに応えるかをまず考えるべきです。二つめに、一向に安定化の兆しが見えないイラクですが、国際社会全体の関心は既に薄れ始めています。
 他国・他地域(例えばスーダン)の状況悪化に伴って、治安回復・復興の目処が立たないイラクから全体に引き気味になっています。日本は、逆に、そういう時だからこそイラクの人々のために何をすべきか考え直すべきではないでしょうか。今こそ、保護とエンパワーという「人間の安全保障」の観点から、イラクへの取り組みを再考すべきと考えます。

12月6日、米国は超党派による「イラク研究グループ」からブッシュ大統領に向けてイラク政策の見直しを求める報告書を提出しました。報告書は「イラク政府の崩壊と人道的な大災難」の可能性を警告しつつ、米国政府のイラク政策の転換を求めています。そうした政策転換も今後、イラク情勢を大きく変化させる可能性があります。
 既に、イラクで活動するイラク並びに国際NGOの連合体であるNCCIや国連は、こうした事態の到来に備えて対応策の検討を始めています。

日本政府は、これまでイラクの市民はおろか日本の市民に対しても、イラク支援の実状やその効果について、充分に説明責任を果たしてきたとは言えません。2003年の開戦を契機に、イラクの人々に恐怖と欠乏の毎日をもたらす事態に至ったことに対しても、何ら責任ある、かつ論理的に一貫性をもった説明を行っていません。治安状況が悪化する中で、イラクの人々の声、現場からの叫びが聞こえづらくなっています。今のイラクの状況を打開する安易な「答」はないでしょう。しかし変化する状況に漫然とこれまでの支援を続けることは、不当な戦争に協力した国の責任ある対応とは言えないと思います。
 以上のことから、イラクで活動する私たちNGOは、日本政府に対し、1)イラクが「緊急」的な状況になるつつあることを認識し、適切な対応策の検討を始めること、2)これまでのイラクへの対応の是非を責任ある形で見直し、改めてNGOや市民の声を聞きながら現場の状況に基づいた包括的なイラク支援策を再構築すべき、と考えます。特に、以下の3点に対しては、可及的速やかに対応されることを要望します。

【要望事項】

1.「イラク緊急状況」を踏まえての多様な支援
  =医療など基本的なニーズを満たすために、イラク政府への支援に限らず多様な ルートを通しての支援をお願いします。

イラクでは現下の緊急的な状況において、基礎医療、水、食料など、生活に必要な人間の基本的なニーズが満たされていません。これまで多額の復興資金が投入されて来ていますが、2006年5月発表のユニセフの調査によると、イラク戦争前の2002年の時点で深刻な栄養失調の子どもは全体の4%だったのに対して、2005年の時点では9%に達しています。この事例が示すように、現在の状況は2003年のイラク戦争の前に比べて悪化しています。
 医療に関して言えば、例えばディワニヤ県の国立産科小児科病院の修復に400万ドルが投入されていますが、未だに酸素吸入器も幼児用の注射針もアドレナリンもビタミンKもありません。 また、現場医療に関わる医師が暗殺の対象になり、これまでに2,000人の医師が殺されています。
 今や、医療システムそのものが機能不全に陥る危機に直面しています。本来はイラクの行政機関を通しての支援が復興支援の観点から重要ですが、政府内の党派対立や汚職の影響を受け、あるいは治安の悪化により政府は行政の基本サービスの責任を果たすことができない状況です。

このような状況を鑑み、日本政府に対して以下のことをお願いします。

1)イラクの現状が緊急的な状況にあると認識し、復興支援の枠組みを見直す。
2) 補正予算による追加支援を予算化し、地方施設、病院、NGOなど、多様なルートを通して、人々の生活に不可欠な基本的なニーズを満たすための支援を実施する。

2.小児ガン・白血病など、日の当たらない分野への行き届いた支援

イラクでは1991年の湾岸戦争以降、白血病やガンにかかる子どもたちの数が増えたと言え、湾岸戦争で使用された「劣化ウラン弾」による影響が疑われています。白血病治療に必要な薬の供給が急務であることは既に専門家によって指摘されていました。その後、2003年の戦争が起こり、フセイン政権の崩壊と共に国内の治安状況は悪化の一途を辿り、保健医療を巡る環境は改善されないまま現在に至っています。
 この状況に対し、私たちNGOはイラクへの医療支援を行う日本NGOのネットワーク組織「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)」を立ち上げ、緊急人道支援の観点から小児ガンや白血病の治療に携わる5つの専門病院へ医薬品や必要な医療機材の支援を行って来ました。活動を続ける中で、支援先の病院から頻繁に訴えられたのが、イラク保健省など政府ルートからの医薬品供給が不安定であること、特に抗ガン剤を中心とした治療薬が絶対的不足しているということです。

JIM NETのメンバーである日本国際ボランティアセンター(JVC)は2006年7月より10月にかけて、支援先であるイラクの小児ガン・白血病の専門病院における医薬品不足の状況について調査を行いました。
 調査の結果、明らかになったのは、医薬品供給に病院間で格差があるということ、また同じ病院でも医薬品の品目によって供給量に違いがあるという問題です。 相対的に状態の良い首都バグダッドの病院でも、保健省による医薬品供給は40%程度に留まり、NGOの直接支援なくして治療を継続することが困難な状況です。現場の医師も医薬品不足の問題に手をこまねいているだけでなく、入手可能な医薬品で代用したり、投与期間や用量を限定するなどの工夫を行って、患者の子どもたちの延命・治療に努めています。しかしながら、医薬品の不足は、ガンや白血病の治療薬に留まりません。診断に必要な検査試薬や成分輸血に必要な消耗品などの供給も滞っているために、全体として治療行為が限定されているのが現実です。
ガンや白血病は長期の継続的な治療が必要であり、ひとたび治療が途絶えるとこれまで現場の医師の努力によって支えられてきた患者の生命がたちまちのうちに途絶えてしまいます。その意味でこれらの病気は高度医療の分野であっても、現下のイラクの状況に置いては緊急の支援ニーズだと言うことができます。

このような事情に鑑み、以下のことをお願いします。

1)ガン・白血病の患者が湾岸戦争や経済制裁および今時の戦争の負の遺産の犠牲者であることを認識し、
2) 緊急支援の方途を活用し、多様なルートを用いた支援を差し向ける。

3.「緊急的状況」において新たに発生した難民・避難民への支援とすべての難民に対する人道的保護

2003年、イラク攻撃の際には、約2000人の難民がヨルダンの難民キャンプに収容されました。今までに1542名 が第三国定住として先進国に移住し、一部はイラク国内へ送還されました。しかし、3年9ヶ月経つ今も、難民キャンプには115名が残り厳しい環境下でテント生活を送っています。一方、最近は、イラクの治安の悪化に伴い、国内や、国境越えて、ヨルダンやシリアに避難する人たちの数が急増しています。UNHCRによると2006年2月サマラの聖廟爆破事件に単を発し、宗派対立が激化してからすでに36万5000人以上が国内避難民とし、一日あたり1000人がヨルダンへ、2000人がシリアへ避難しています。しかし、入国を拒否されるイラク人も多く、行き場を失った人たちが、ヨルダン−イラク国境の緩衝地帯(ノーマンズランド)に滞留しており、国連機関などの支援もなく、安全な水や医療にはアクセスできないでいる人も少なくありません。また、北イラクは、治安が安定しており、バグダッドなどからの避難民も増えていますが、アラブ系住民に対しての規制がはじまり、宗派対立や、武装勢力からの脅迫によって命の危険を脅かされているイラク人も多数存在します。
 一方ヨルダン国内には、70万人以上のイラク人が、主に首都アンマンで都市難民として暮らしています。ビザが切れても、危険なイラクには帰国できず、強制送還されることを恐れながら生活をつづけています。住民登録をしていない難民の子どもたちは公立学校にも行けず、医療も受けられません。妊産婦は出産に必要な費用を払えず危険な状態に陥るケースが多く、また出産することで不法滞在が発覚することへの不安も抱えています。
 イラク国内の治安が悪化の一途をたどっている今、難民や国内避難民となった人々を保護し、人道支援を拡大することが求められています。

日本政府は、2003年の開戦前から、世界大2位の経済大国に相応した難民支援を国際社会に約束しましたが、開戦直後の160帳のテント寄贈と、2003年夏に終了したJPFを通した医療支援で終わっています。私たちは難民支援に関わってきたNGO として日本政府に、難民問題の解決に責任を持つことと、現状のイラクを緊急事態ととらえ、新たに発生している難民、国内避難民の支援に真摯に取り組んでいただきたく、以下のことをお願いします。

1) 2003年のイラク戦争時に発生し、いまだにルウェイシェッド難民キャンプに残留している115名の難民の日本への受け入れ(第三国定住)を行う。あるいは、他の先進国が受け入れるように、外交的、財政的な協力を行う。
2) 新たな難民・避難民になった人々に対し、
 @シェルターとして周辺諸国に難民キャンプを設営するか、すでに存在する難民キャンプを拡大し、人道支援を行う。
 Aノーマンズランドにいる194名の難民は、シェルターとして、ヨルダン内のルウェイシェッド難民キャンプに保護するよう、ヨルダン政府と交渉にあたる。
 B周辺諸国に対して、保護が必要な難民を入国拒否しないよう働きかける。
3) 都市で暮らす難民たちの保護
ヨルダンや、シリアで暮らす都市難民たちの保護や支援のプログラムに取り組む。その際子どもの権利、障害者やジェンダー、リプロダクティブヘルスに特段の注意を払う。

                                 

日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
−日本国際ボランティアセンター(JVC)
−日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
−アラブの子どもとなかよくする会
−アジアとむすぶ市民の会・長崎
−子どもの平和と生存のための童話館基金
−イラク医療支援・通販生活
−劣化ウラン廃絶キャンペーン(CADU-JP)
−スマイルこどもクリニック

日本国際ボランティアセンター(JVC)

 
 


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