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イラク復興支援国会議・東京会合に関する要望書 
2004年10月13日 更新
 

日本国際ボランティアセンター(JVC)

10月13、14日に、イラク復興支援信託基金ドナー委員会会合及び拡大会合(東京会合)が東京で開催されます。この会議には、イラク、国連、世界銀行、各支援国が出席し、以下のことが議題にあげられます。

  1. 統治権限移譲後のイラク側の課題
  2. マドリッド会合一周年を迎えた近況の概観
  3. イラク復興支援信託基金を通じたプロジェクトの実施

イラク復興支援信託基金とは、国連と世界銀行の、イラクの復興のための基金のことです。日本もこの基金に4.9億ドルを拠出することになっています。金額としては支援国中最大となっており、その使途に関して重大な責務を負っています。

JVCは、これまでのイラクおよび隣国ヨルダンでの活動を通して得られた現場経験を元に、この会議において話し合われるであろうイラクに対する支援内容が、よりイラクの人々の視点に立った、彼ら彼女らが安心して生活できる社会を築くことにつながるようなものになることを願って、10月12日に日本政府に対して要望書を出しました。以下、要望書の内容を掲載します。


2004/10/12 

 外務大臣
 町村信孝 殿

イラク復興支援信託基金ドナー委員会会合及び
拡大会合(東京会合)に向けての要望書

昨年の3月に始まった戦争は、多くの破壊と犠牲者をもたらしました。その後も、連合暫定当局(CPA)による占領政策の失敗から、暫定政権下でも過度に武力を重視して継続する「治安回復」等と、それに反発する武装勢力との間の暴力の応酬・連鎖によって、イラクの人々の生活は脅かされ続けています。

今年6月、主権がCPAからイラクに返還されましたが、治安は安定せず、最近では来年1月の移行国民議会選挙を控えて、反対派の封じ込めに米軍とイラク軍の武力による押さえつけが一層厳しくなってきています。ファルージャやサドルシティでは毎日のように空爆が続き、10月1日には中部サマラで米軍とイラク軍による掃討作戦が実施されました。この作戦で、米軍は「125名の武装勢力を殺害した」と発表しましたが、イラク赤新月社は「ほとんどが一般市民で、遺体が路上に散乱している状態」と報告しています。また、米軍や米軍に協力するイラク人を狙った「テロ」が多発。9月30日には、バグダッド南部では連続爆発事件があり、米兵から菓子を配られていた子供35人を含む42人が死亡するという悲惨な事件が起きています。開戦から今までで犠牲になったイラク市民の数は13,086人から15,149人に上ると言われています(Iraq body count 10月6日現在)。

今回の復興会合では、1. 治安、2. 選挙準備を含む政治プロセス、3. 復興戦略の三つの復興課題が議論されます。私たちは、復興課題を話し合うには、イラクの人々の視点から生活回復と安定について議論することを基本的考え方にすべきと考えます。イラクは現在、ますます混迷の度を深めています。このような状況を見ていると、いつになったらイラクの人々が安心して暮らせるようになるのか憂慮の念を深めずにはいられません。「復興」は、今でも無意味に命を落とし、恐怖に怯えているイラクの人々の視点から考えるべきです。日本は、「人間の安全保障」を国際協力外交の柱としています。今こそ日本政府は、「イラクの人々を中心とする」姿勢を明確に打ち出し、ぜひ以下の諸点を考慮に入れ、この復興会合を真にイラクの人々のためにするよう求めます。

【要望事項】

1. 民間人保護について

これ以上イラク市民の間に犠牲を出さず、生活回復の基盤を壊さないようにして下さい。戦争前の外交行動から自衛隊派遣まで常に協力してきた日本は、現在の治安状況に対しても大きな責任があります。現在、来年1月の移行国民議会選挙を控えて、「治安回復」の名目で行われている米軍の武力行使は選挙実現に役立つどころか、多数の市民の命を奪い、彼らの生活基盤を破壊し、イラクのさらなる混乱と不安定化を導くものです。イラクの人々の生活回復は、政治プロセスの達成で終わるものではなく、そこから始まるものでもありません。また、現在のイラクの治安悪化と改善の困難さは、国連決議を無視した戦争の開始、民間人保護を軽視した占領政策など、ジュネーブ条約違反を含む基本的な国際規範を蔑ろにしたことに主たる原因があります。私たちは、国連アナン事務総長と同じく、何よりも治安は「法の支配」の確立がなければ回復しないと考えています。日本政府は、米国に対し武力行使を即時中止し、国際法など「法の支配」に基づいた民間人保護を徹底するように働きかけて下さい。

2. 「復興戦略」について

「復興」については、私たちの現場活動及びイラクの人々から知り得た以下の課題への対応を考慮して下さい。

  1. 基本的な生活ニーズ(Basic Human Needs)への対応を中心とした人道支援を優先させること。また、武力衝突などで被害を受けた地域や人々への救済を何よりも高いニーズとして優先する。しかし、その実施にあたっては、武力行使ととられかねない軍隊や自衛隊が行うのではなく、中立性をもったNGOや国連機関などによって行われるべきである。
  2. 人道支援を最優先にした上で、湾岸戦争から今回のイラク戦争によって創り出されたイラクの特別なニーズに応えること。例えば、イラクでは劣化ウラン弾の放射能が原因と思われるガンや白血病など、難病の子どもたちの数が増えており、特別な支援が必要。今回の戦争でも劣化ウラン弾が使用されたこともあり、さらに増える可能性がある。予防の観点からも、関連情報の早期公開を米英両国政府に求めると共に、放射能汚染の調査と除去を行うこと。
  3. 戦争によって国を追い出された難民への早急の対応を行うこと。 今回の戦争で難民になった人たちが、ヨルダンのルウェイシェッド難民キャンプに521名、イラクとヨルダンの国境の無人地区(ノー・マンズ・ランド)に、761名が一年半もテントで暮らしている。砂漠に位置する難民キャンプは非常に環境が悪く、解決に向けて国際社会の積極的な介入が望まる。特に、日本政府はイラク戦争開始前に、難民支援を行うと表明しており、改めてこの約束を実現すること。具体的には、彼らが人間的な生活に戻れるように、
    1. 支援国間で、包括的に第三国定住を受け入れる話し合いを持つ。
    2. 現在の難民キャンプの生活環境改善に早急な支援を行う。

最後に、私たちは、復興会合ではイラクの人々を中心に議論すべきで、会合を大義なき戦争を正当化する政治目的に利用してはならないことを強調しておきます。この戦争に一貫して反対してきた私たちは、今回の復興会合にとどまらず、現在の混乱状況をもたらしたイラク戦争とは一体何だったのか、実際にイラクの人々の暮らしはどのように変わったのか、そのことを真摯に捉えなおし、戦争の不当性を問い直すべきであると考えていることを付け加えておきます。

日本国際ボランティアセンター(JVC)

 
 


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