
「イラク市民社会からのメッセージ」レポート
2006年6月21日開催 JVC広報インターン 櫻井 愛
今回の水曜講座は「イラク市民社会からのメッセージ」ということで、JVCイラク担当の原文次郎さんにお話していただきました。
1.イラクの人々の暮らしは今 〜バグダッドの人々の声〜 イラクでは戦争後「アリババ」(盗賊)が増え、治安が悪化しました。米軍による住民デモへの発砲事件も起こり、レジスタンスと占領軍との関係も悪化しました。このような身の安全を脅かされる事態の中、イラク警察が投入されると犯罪は少し減り、一般治安は改善されました。しかし警察の中には一生懸命に仕事をしている人がいる一方で、警察になることで堂々と銃を持ち市民を攻撃する人もいたので、警察への信頼は下がっていきました。
その後再びレジスタンスと占領軍の対立が激化し、外国からアルカイダ系の武装組織も入ってくるようになり治安はますます悪化しました。そんな中で米軍によってザルカーウィが殺害されましたが、イラク市民は「彼が殺されてもまたすぐに次のザルカーウィが出てくるだろうから、治安は良くならない」という見解でした。また、民兵や自警団、米軍、イラク国軍、治安維持部隊などはみんな銃を持っているので治安はおさまりきらないという声もあります。民兵や自警団に入る人の中には、仕事がないから武力組織に入るしかないという背景もあるようです。
イラク国民は「安心して暮らせる」という望みを持っています。そんな中で外国人が入ってきて治安を乱すことに嫌悪感を抱いている人も少なくないようです。
2.「非暴力の国づくり」会合 〜イラクのNGOや議員の声〜
「イラクで非暴力を広め、平和を主導するためのネットワーキング会合」が、イラク隣国のヨルダンで開かれました。この会合では対立状況を把握し、解決に向けての話し合いが行われました。主催はNCCIというイラクに支援をしているNGOで、イラク国内のNGOも含めたネットワークを持っている団体です。参加したのはイラク議会関係者、政治家、イラク報道機関関係者、イラク国内NGOスタッフ、国際NGOのイラク人スタッフ、イラク地域社会の代表者などで、最後日にはそれに加えてイラク人以外の国際NGOスタッフや国連関係者も参加しました。
話し合いの結果としては一本の解決策にしぼることはできなかったものの、活発な議論ができたそうです。また、対話の重要性が確認できたこと、イラク国内では話せないことを議論できたということに意義があると原さんはおっしゃっていました。
見解が相違していたのは「治安を乱しているのは誰か」という点でした。「スンニー派が自分達を襲ってくるので正当防衛で何とかしなければ」というシーア派の人もいます。また、「イラク人の名前をかたって外国の武装勢力が脅迫状を送ったりしている」という意見もあります。その他にも、「直接誰かはわからないので対立する別の派だろうと思ってしまう」という意見もあります。宗派の対立については、検問所で「何派か」と聞かれたりするので意識せざるを得ないそうです。また、人権侵害や殺害方法が残虐化していることについては、アメリカが放っておいているせいだという意見もあるようです。
この会議が今後のイラクに影響を与えられるかはわからないようですが、良い方向に変わっていくためのステップになれば良いと思います。
3.ガン・白血病の子供たちへの医薬品支援 〜患者の家族や医師の声〜
イラクでは、戦争の混乱で社会システムが麻痺し、薬の流通が滞っています。また、近年の攻撃や湾岸戦争で使われた「劣化ウラン弾」の影響で多くの子どもたちが白血病やガンで亡くなっています。JVCはJIM-NETというネットワークを通して薬品や機材の支援を行っています。現在イラクでは保健省から支給される薬が全体の3割程度で、残りの7割は国外NGOから送られてくるものです。しかしNGOからの支援も戦争直後に比べると減っているそうです。また、現在外国人はイラクに入ることができないので、ますます支援がしにくくなっている状態です。
イラクではお金の問題や薬の不足、衛生状況など状態の悪さから国内で治療を受けられない子どもがたくさんいます。そのような子どもたちは隣国などで治療を受けることを望んでいます。しかしそれもまた非常にお金のかかることなので難しい問題です。
4.感想
新政府が発足したにも関わらずイラクでは現在も混乱が続いています。しかし武力闘争やテロが起こっている中でも、一般市民や今回の会合に参加したような議員や政治家、地域社会の代表者などほとんどのイラク人は、安心して暮らせる平和な社会を望んでいるのです。彼らのそんな声を、今回の講演で聞くことができました。イラク市民が平和に暮らせるようになる日が一日でも早く来るように、私も自分にできることを探して働きかけをしていきたいと思いました。
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