映画:『パレスチナ1948 ― NAKBA ―』

映画『パレスチナ1948 - NAKBA -』

お芝居やドキュメンタリー映画を観た後、外の風景がちょっと異様に感じられることってありませんか? 「(夜なのに)なぜこんなにやたら明るいんだろう」、「なぜこの人たちはこんなに笑いあってるんだろう」といったような、現実感が失なわれている状態のことです。私はこれが嫌いではありません。

先週見た映画 『パレスチナ1948 ― NAKBA ―は、そのような映画の典型でした。現在の中東問題の淵源である、イスラエル・パレスチナ問題を取り扱った映画です。以前から関心があり、現在勤めているNGOでもパレスチナで事業を行なっている関係もあって観てきました。

なんとこの映画、Yahoo!映画のユーザーレビュー採点で、5月1日現在、なんと1位を獲っているのです。

(※これ以降は一部ネタばれ部分がありますのでご了承ください)

イスラエルとパレスチナ

この映画は、今から60年前の1948年のイスラエル建国宣言以降繰り返されてきたイスラエルとパレスチナ間の紛争や悲劇の記録であるとともに、パレスチナの失われた村々とそこに住んでいた人々の姿を追ったものです。

シオニズム(イスラエル(=パレスチナ)の地にユダヤ人の故郷を再建しよう、という運動)によってやってきたユダヤ人によって、元いた土地を様々な形で「追い出されて」難民となったパレスチナの人々。イスラエルのキブツ(共同体)によって村ごと "上書き" されて地図から消されたものも数多くあったといいます。

その後、4度にわたる中東戦争やレバノン侵攻、2度のインティファーダなど、数多くの悲劇を繰り返されてきました。イスラエルの建国とそれに伴うパレスチナの人々の難民化、これをパレスチナ人はNAKBA(大惨事)と呼ぶそうです。

パレスチナの叫び

監督は、フォトジャーナリストの広河隆一氏。40年間もの間、この問題を追いかけている方で、多くの著作や写真集を出されています。映画は、ほぼ全編が広河氏が実際に現地で取材した素材で構成されています。戦車が走り回ったりその犠牲者を映したりといった状景もありますが、多くはパレスチナの人々へのインタビューの積み重ねでできています。

「なぜだ! 60年経ってまだ殺し合いが続いている、いったい誰が始めたんだ!」と涙を浮かべて憤る老人。

自分の父の時代に村をイスラエルに "上書き" された青年は、村の歴史を検証するとともに、「ナチスのことには世界中の人々が関心を持ち、多くのことが文献としても残されているのに、パレスチナ人のことは嘘つきだと言う。なぜですか? ナチスは人間で、パレスチナ人は動物なんですか?」と、さびしそうに笑っていました。

あたりまえのことですが、多くのパレスチナ人にとって、自分(もしくは親の世代)の人生を大きく狂わせた NAKBA は、彼ら彼女らの今現在の人生にも大きく影を落としています。そのインタビューの多くは、(陳腐な表現ですが)胸を苦しくさせるようなものが多いです。

イスラエル人の中にもパレスチナ側との対立をなんとかしたいと考えている人たちはいて、人権のための医師団(PHR、週末にパレスチナ側に巡回診療に出るイスラエル人の医療団体)の活動の様子や、元兵士だった人が兵士時代にパレスチナ人に対してなにをやってきたのかをカミングアウトする会の様子などもありましたが、それらはあくまで特殊・特別なものであって、まだまだ異端視されることが多いようです。

瓦礫とオリーブ

パレスチナの難民キャンプは、もう何十年も人々が暮らしているために、普通の町と ほとんど変わらないことが多いです。しかし、長い間の紛争を経ており、建物が破壊されて瓦礫のままで放置されていることが多々あります。そのため、空の青色を除けば、ほとんどモノトーンといってもいいような状景が続きます。

一方で、パレスチナの人々にとって、オリーブの樹は特別な存在だとよく聞きます。古くからこの地方に自生しており、実が貴重な食用になるということもありますが、根をおろして青々と葉を茂らせるこの樹の姿が、「この土地は自分たちパレスチナ人のものだ」という象徴にとらえられるそうです。

映画の最後に、イスラエルの共同体に "上書き" され放棄されたある村の人々が数十年ぶりに里帰りする場面がありました。そこには、今もオリーブの樹が残っていて、つけていた実を彼らはうれしそうにもいでいました。

その顔と木々の鮮やかな緑色が、瓦礫の灰色とあまりにも対象的でした。

東京での公開はすでに終わってしまったようですが、今後全国で上映されるようですし、自主上映も募集中とのことです。見逃してしまったという方は、ご検討されてみてはいかがでしょうか。

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