『差別と日本人』を読みました
Posted by Junya HOSONO 2009年11月 1日 PM 4:08
元自民党議員の野中広務氏に対する、論説活動などで知られる辛淑玉氏によるインタビューです。そのインタビューの合間に、話題に関する背景情報やエピソード、辛氏の見解が入る、という構成の本でした。 野中氏の年少の頃からのライフヒストリーを追っていく中で、辛氏の広範な関心分野を踏まえて質問していく形です。
取り上げられている問題は多岐にわたっている
両氏の出自に関わる部落問題や在日問題からはじまり、関東大震災における在日への差別、オウム真理教の信者の子供たちへの差別、従軍慰安婦問題日の丸君が代について(国旗国歌法案)、沖縄基地問題、ハンセン病訴訟、石原慎太郎・麻生太郎について、北朝鮮問題などなど(簡単に触れるものもありますが)。その多くについて、辛氏による差別される側もしくは少数派の視点からの解説が入ります。
多くの事柄に関して、辛氏からの問いかけからはじまる構成になっているので、
「この問題について話を聞いてよ(聞かせてよ)」という訴えが延々と続く、という
ような印象を受けるが、ただ、そのほとんど関して、野中氏が(多くは政治家時代に)何らかの形で関わっていたり、そうでないとしても自身の意見を持っていることに驚かされます。少なくとも、こうした分野に多く関わってこられたことなのだろうと。自分自身が問題の関連法案の制定にかかわったことなどについても発言されています。 (もちろんそうした部分を編集して集めているのかもしれませんが、じゃあ私自身がこれだけのことに対して答えられるものを持っているか、と言われるととてもできない)
自分が気づかないうちに差別する側に回っていないか?
こうしたこと全体を通じて、タイトルにあるような「日本における差別」の構造の
在り方が浮かび上がってくる…ようにも思えますが、問題が多岐にわたるせいか、いまいちその輪郭がぶれてしまっているかな、という印象で終わってしまいました。
全体的にはちょっと野中氏を美化しすぎているような感もありますが(たとえば野中氏の発言のウラをとっているような節もあまり見られない)、新書で読みやすいということもあり、数多くの問題に対する言及を含んでいるので、読んで損はないと思います。自分自身が、気づかないうちに誰かを差別する側にまわっていないかを見直す役に立つかもしれません。
最後に、ともに辛氏の解説から印象に残った部分を引用しておきます。
一般に、日本の社会は、そのリーダーに政治的な思想性や時代に対する先見性を求めない。求められるのは、ムラノ利益のために、けっして「恥を外にさらす」ことなく、かいがいしく人々の「世話」をしてまわることだ。そして原理原則や公平さなどとは無関係に、とにかく「もめごとを処理する」こと。この延長線上に日本の政治がある。
差別とは、富を独り占めしたいものが他者を排除するために使う手段である。そして、この差別は、する側になんとも言えない優越感を与える享楽でもある。
まず、差別をするという実態が先にあり、それから「部落民」が作られ、「被差別部落」という空間が形成される。逆ではないのだ。差別する側があいつは「部落民」だと決めれば、そこから差別が始まる。要するに、関係性の問題なのだ。
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