『クラウド・コンピューティング』を読みました

クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの (朝日新書)

最近よく聞くこの「クラウド・コンピューティング」という言葉が持つ意味と、その背景についてわかりやすくまとめられています。技術に詳しくない人でも、「あ、それ聞いたことある」といった事例やサービスをあげて説明されているので、読み進めやすいと思います。

クラウド・コンピューティングとはなにか

第1章では、ブロードバンド回線の普及により、ユーザーの「これがしたい」という欲求をかなえる機能を持つソフトの置き場所が、これまでの「パソコンの中」にではなくネットの向こうになり始めた、ということ。 例として、ワードプロセッサ(→GoogleDocs)、画像処理ソフト(→PhotoshopExpress)、地図ソフト(→GoogleMap)などがあげられています。

第2章では、 携帯電話とiPhoneの違いを、前者は「携帯電話という限られたハードウェア上で快適に動くこと」を目的に、後者は「パソコンと同じことをどこででもできるようにすること」を目的としており、立脚点が違うという説明がありました。 また、家電の性能向上をハードではなくソフトで解決する手法がとりいれられている、とも。

第3章は、私たちが取り扱うデータそのものも、ネットの向こうに保管する流れがある、とのこと。 メール(Gmail)、写真(Frickr)、メモ(evernote)、顧客情報(salseforce.com)など。しかも多くの場合は容量の制限がない=削除する必要がなく、閲覧する場所を選ばなくなり、他者との共有も容易となる、と。

第4章では、あらためてクラウドの特徴として「サービス化」「ボーダーレス化」「分散(データは手元にあるだけではない)」「集約(ネットの向こう側と、手元のパソコンとに求められる要素が異なってくる)」の4つをあげられています。 また、当然としてインターネットにつながった状態を前提とするコンピュータの利用形態であり、回線速度の向上と、AJAXなどの技術によって使い勝手も向上することで浸透してきた、という認識。

最後の第5章では、クラウド・コンピューティングの問題点として、ネットの向こう側の企業が信頼できるのか、サービスの品質はどうか、の2つをあげられています。巻末には、こうした傾向をかたち作るさまざまなサービスの一覧があるので、これらを試してみることで、実際にどのようなことなのかを体験することが
できるでしょう。

全体を通して、容易に読み進めることが可能なことで好感がもてます。

現象面を超えてもう少し踏み込んでほしかったが

ただ、いかんせん内容が技術自体あるいはIT業界方面の話、もしくは目に見える現象面に終始し、こうした傾向が、では実際に普通に暮らす私たちの生活やものの考え方にどのような影響を与えうるのか、そこまでは踏み込み切れていないとも思いました。

「新しい便利なサービスがでてきたので、その良しあしを見極めて使いましょう」
ということはわかりますが、たとえば生産活動が一人である程度完結するパソコン内のワープロと、オンラインでライブで共有できるネットサービスとしてのワープロでは、仕事のやり方、情報共有の仕方、ひいては知的生産のやりかた自体がこのように異なってくるのではないだろうか、などの指摘まであればなぁと思いました。

ただ、新書サイズとしてはこれはこれでバランスがとれているので、クラウド・コンピューティングについて現時点で全体像をつかむうえでは読んで損はない本だと思います。

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