あなたのパソコンは、あなたのためだけのものじゃない:グリッド・コンピューティング
Posted by Junya HOSONO 2009年4月11日 PM 2:10
あなたのパソコンは、毎日仕事してますか?
パソコンなどのコンピュータから見れば、人間のユーザーが入力・指示するタスクのために費やす作業時間は実はほんのわずかで、その他に大量の「空き時間」が存在するのです。もちろんCPUパワー100%で動作することもありますが、それはごく一部・一過性のこと。たいていはユーザーからの「次の指示」を待っているわけですね。
「なにをぅ、なまけとるんかいこのパソコンは!」とお思いになられましたか? そんなあなたに、その「空き時間」を有効に使って(一種の)社会貢献してくれる仕組みがあるのです。
まずは、下のビデオを見てください(英語ですみません)。これは、HIVの増殖を抑えるための研究を、グリッド・コンピューティングを使って進めることを紹介したビデオです。
グリッド・コンピューティングとは、個人のパソコンなども含む多くのコンピュータを使って、ある目的のために大量の情報処理を数多くのコンピュータ間で連携して行う仕組みです。簡単に言えば、1台のコンピュータで100年かかる処理も、10000台のコンピュータでやれば100年/10000=0.01年=3.65日で終わる、というわけですね(あくまで単純計算ですが)。まさに人海戦術で、うまくいけばとてつもないパワーが生まれるのです。
ですが、コンピュータをつなげてどうこう、ということよりも、「ある目的のために」、ということのほうが大事なのかな、というふうに思います。これが単にだれかの営利目的とかなのであれば、そもそもだれもそれに参加する義理はないのですが、グリッド・コンピューティングの多くは、医療の研究や昔の暗号の解読、数学・物理学分野での証明問題の解明などがプロジェクト目的とされています。
これらの目的の達成のためのシミュレーションなどには膨大なコンピュータパワーが必要とされており、ちょっとやそっとのホストコンピュータでもどうしようもない、とされています。そこでグリッド・コンピューティングの出番、というわけですね。「世界中の皆さん、これらの目的のために、あなたのパソコンの空き時間を貸してくれませんか?」というわけです。
私たちがこのグリッド・コンピューティングに参加するためのソフトウェアは無料で提供され、自分が参加したいプロジェクトがインターネットで選べるのです。各自のパソコンごとに割り振られた仕事を空き時間に自動でダウンロードしてきて、自動で処理して自動で作業結果を大元にアップロードして返すのです。ユーザーはなにもしなくても、必要なことはすべてそのソフトがやってくれるわけですね。まさにラクチンです。
現在、個人的に以下の3つのプロジェクトに参加しています。
- SETI@home
- 地球外からくる信号から非自然信号を抽出・分析して、地球外生命体を探索しようとするもの。その分析のために多くの人々がコンピュータパワーをボランタリーに提供したことで、グリッド・コンピューティングの初期の成功事例としてよく取り上げられるようです。よくSF小説を読んでいた人間としては、やはりロマンを感じてしまいます。
- Fight AIDS@Home (World Community Grid)
- いわずと知れたAIDS。HIVに感染することで体の免疫が働かなくなって発症し、治癒するための薬は現在も発明されていません。このプロジェクトでは、HIVに感染しても、それが体中に蔓延することを防ぐための研究のためにコンピュータパワーを必要としています。 記事冒頭のビデオは、このプロジェクトのことです。
- ファイト!小児がんプロジェクト (World Community Grid)
- IBMと千葉大学、千葉県がんセンターが共同で行うもので、小児がんの一種である「神経芽腫」(生存率が40%未満だとか)の治療薬開発をめざす研究に関する実験シミュレートを行うもの。最近ニュースで取り上げられました。 10年来の千葉住まいなこともあり、参加。
参加すると、パソコンの画面右下のタスクトレイにアイコンが出て、「お、仕事してるのかな」と思います。それだけ、です。あとはソフトが勝手にやってくれます。特にパソコンの動作が遅くなったとは思いませんが、このあたりは個々人のパソコン環境にもよりますかね。少なくとも僕は普段の自分の作業にはまったく支障はありません。
これらのプロジェクトに参加したからといってなにかしらの具体的な報酬があるわけではありません。 あるとすれば、社会的プロジェクトに参加できたという満足感、かな?
でも、いいんです、自己満足で。それで、HIV増殖の抑制や小児がんの治癒の可能性がちょっとでも高まるのであれば。そうじゃないですか? 「社会貢献!」なんて肩肘張ってやるもんじゃなくて、「自分以外の人のこともちょっとは考える余裕を持とうよ(無理なくね)」程度のことでいいと思うんです。
もちろん、グリッド・コンピューティングに参加したために、そちらにCPUパワーをとられてしまって本来自分がやりたいパソコン仕事の動作が遅くなったのでは本末転倒なので、動作する時間帯やどれくらいそちらにCPUパワーを割くのかなども設定できますよ。
あなたのパソコンは、あなたのためだけのものじゃない。その空き時間を、有効に使ってみませんか?
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