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JVC南アフリカ国別方針(2010~2015年度→2015年までの事業実施期間延長に伴い本戦略対応期間も延長中)

2018年3月 6日 更新

1、背景

南アフリカ(以下、南ア)では、アパルトヘイト(人種隔離政策)下において、黒人を隔離、抑圧するだけでなく、資本の論理に基づいた労働力の持続的かつ強制的な動員システムが構築された。その結果、黒人社会に徹底的な貧困がもたらされただけではなく、彼らが自らの知や資源を活用・発達させることができなくなり、経済的、物質的そして精神的にも白人社会に依存する体制がつくり出された。政治的体制が変わっても、「支配と依存」の構造を変えることは、それ以上に複雑かつ困難である。1994年の民主化によりアパルトヘイトが終焉、新しい国づくりが開始され、民主的な憲法や新しい法律のもと、人種融和と黒人の生活向上が最重点課題とされ、言語や文化、宗教など多様性を認識する社会の構築を目指してきた。しかし、新しい政策や法律を実行していく機構や人材が特に旧黒人地域で不足しており、「理想と現実のギャップ」が大きい。
にもかかわらず、具体的な政策としては、当初は貧困層の底上げを謳い、市民社会やNGOとの対話、協調を重視していたANC政権だが、特に1999年にターボ・ムベキが大統領に就任してからは徐々に大統領府の権限が拡大し、企業の意向を重視した経済振興政策が優先されてきた(1)
南アは、プラチナ、金、クロムなど世界でも有数の鉱物資源国であり、これら鉱物価格の上昇を背景に経済成長を遂げてきたが(2)、資源からの収益に頼る経済は富の集中を招き、アパルトヘイト時代以上に貧富の格差を拡大させてきた。その結果、物価が高騰する中で貧困層の置かれる状況はより困難になっており、犯罪、失業、HIV/エイズ、汚職など直面する社会的課題を多く抱えたままである。黒人社会の非就業率が約60%を占めるなかで(3)、一国の中に「南北」格差が凝縮するような構造がいまだ色濃く残っている。
こうした中、NGOや政府により貧困層への「援助」も行われているが、「開発=豊かな白人社会に近づく」的なプロジェクトになる傾向があり、物質的援助がより依存を高める結果になっている(4)。農村の自給率が10%以下であるのに、白人農場型商業農家育成のための支援、画一的な食糧増産援助が優先されているのもその一例である。援助への依存度を増した貧困層の人びとは外部条件・状況に翻弄され、ますます生活が苦しくなることも少なくない。

2、JVC南アフリカのこれまでの取り組み

都市スラム、農村部での生活改善事業(92~94年)、UNHCRとの難民を対象とした職業訓練(94~01年)、都市スラム地域の子ども支援(96~05年)(ブヤニ小学校、インクルレコ小学校およびテボホ障害児ホームの自立に向けた支援)

JVCは1992年、アパルトヘイト体制の底辺に置かれている人々に連帯、支援していくために、活動を開始した。90年代は、アパルトヘイト直後の時代に、その影響を受けた環境下において住民が自らの力によって自分たちの生活を改善していくことを目指して、都市スラム・農村部での生活改善事業、反アパルトヘイト組織からの帰還難民や南ア国内の貧困層に対するUNHCRとの職業訓練、都市スラム地域の子ども支援等の活動を実施した。
農村部での生活改善事業においては収入創出活動の難しさを経験、地域内の資源を有効利用した活動の必要性という学びを得た。職業訓練については、98年からはアフリカ諸国からの難民も対象にしたが、自国に帰還できない難民も多く、習得技術を活かす場が祖国とはならない点に矛盾を感じることもあったが、難民はドロップアウトが少なく、仕事を得ることができた生徒が多かった。
小学校および障害児施設の支援は前現地代表個人のネットワークをJVCの事業につないで開始した。アパルトヘイト中/後に住民がコミッティーをつくって運営していた学校や施設において、先生やスタッフ研修、公立化に向けての行政との交渉等に協力し、公立化やNGO登録をして独自の運営ができるようなったため支援を終了した。民主化後に、スラムでの活動に対し政府からの補助金が得られるようになった時期でもあり、その間をつなぐことができた。また、住民主体の運営が地域の改善につながっていき、それが教育や福祉の先駆的な例となることで、住民による地域づくり、オルタナティブな教育の可能性を提示することができた。

環境保全型農業の普及(01~05年)

2000年に入ってからは、アパルトヘイトの傷跡からの回復、生活再建を目指していた復興ステージから、長期的展望を持って地域づくりを目指す開発ステージへと活動が変化、過去の活動等から見えてきた課題や人脈をつないだ活動を実施している。
UNHCRとの協力で職業訓練を実施した地域の一つに、農業分野の職業訓練とその後のフォローアップを経て2001年から環境保全型農業の普及活動を開始したカラ地区がある。2000年前後は、1994年の民主化後の南アの復興政策において、鉱工業やサービス業部門を中心とする経済成長が中心となる一方で、農村部が長期的な復興・開発の展望がないままに置かれてきたことが課題として明らかになってきた時期である。
本事業ではアパルトヘイト下の出稼ぎ政策で農業が衰退した農村地域で、人びとが安定した食料生産ができることを目指し、東ケープ州カラ地区9ヶ村で身近な資源を有効活用し、持続可能な環境保全型農業の研修と普及を実施してきた。活動の結果、食料生産の向上による支出減、などの具体的な成果と、人びとが村で生きる自信や希望を取り戻したなど精神面での成果が得られたことが確認された。
最後の1年半は5年間のプロジェクトによるインパクトをより定着させることを目的としてフォローアップ期間として、JVCの駐在員を置かず、専門家は2ヶ月に1度程度、数日村を訪問するという体制に変えた。この結果、2006年評価当時にJVCの事業撤退に不安の声をもらす農民が多数だったのが、2008年度の評価時には前向きな関係をつくることができ(5)、活動終了に向けたフォローアップ期間設置の有効性が確認された。
またこの間、活動地域に政府による大型食糧増産援助が入ったが、調査の結果、それを導入した村人には借金が残ることが判明した(6)。一方、JVCの研修で学んだことを実践した場合には、農薬や化学肥料等の投入がないにもかかわらず、食糧増産援助より多くの収量を得て、それらを自家消費したり近所の人に販売するなどのことが可能であった。人びとの生活改善においては、本事業で実施した地域の資源を有効活用した環境保全型農業のように、生計手段の一部であっても援助など外部状況に左右されない生活手段を持つことの有効性が確認された。

HIVエイズ

2000年以降は、90年代から増加してきたHIV感染が爆発的に広がり、HIV/エイズの脅威が南アフリカの深刻な課題として顕在化してきた。JVCの活動においても、過去に研修を通じた人材育成を中心に行ってきたが、育成された人々がエイズで亡くなるなど、様々な形でHIV/エイズの影響によるケースが報告され、何らかの形での活動の必要性を感じ始めた。南アでは現在人口の約12%にあたる570万人がHIVに感染しており、貧困層や子どもたちに深刻な影響を及ぼしているが、南アフリカ政府の対応は遅く、ケアや治療が受けられない人々が多数を占めている(7)
こうした状況を受けて、2005年8月にリンポポ州ベンベ郡において、医療保健分野で活動する(特活)シェア=国際保健協力市民の会との共同プロジェクトを開始し、現地NGO・TVAAPおよびポロションとの協働という形で実施している。在宅介護ボランティア育成、陽性者グループの支援、子ども支援等包括的な活動をするなかで、特に家庭菜園研修について、参加者が「支援される人」「ケアする人、される人」という受身な立場から、より積極的に自分の生活に関わるようになったことが確認されている(8)
活動開始当初は、協働団体の組織・運営面での強化を通じて活動の持続性の担保を目指したが、TVAAPにおいては不正事件が発生、またポロションにおいてはダイレクターの不在等の困難が生じるなど、組織の内部統制の基本的なところに翻弄され、この点については具体的な成果は現れていない。

3.JVC南アの活動方針

アパルトヘイト時代に生産・生活基盤を破壊された南アの黒人社会では、現在でも農村での生活基盤が脆弱で、農村部から都市部への人口流入が続いている。しかし、黒人社会の非就業率は60%にも上り、人びとは都市化に適応できているわけではない。アパルトヘイト下でつくられた「出稼ぎ社会」の構造下では、一世帯が都市(出稼ぎ)と農村(帰る場所)双方が存在することで成り立っているケースが多いが、農村において農業で生計を立てる人はわずかであり、その経済構造は「都市化」している側面がある。このため、人びとの社会背景が複雑であり、様々なアプローチによって都市と農村両方を視座に入れていくことが南アの課題を捉えていくうえで重要である。実際、JVC南アでは多様な人々を対象に、2005年度までは都市・農村両地域での活動を実施してきた。
上述のとおり、アパルトヘイトの後遺症をひきずったまま現在の経済振興策下におかれた南アは、極端に引き裂かれた社会、グローバリズムの行き着く先とも捉えることができ、「世界の縮図」とも言われている。南アフリカに関わるということは、GDP世界21位という巨大な経済力と、HDI(人間開発指数)121位(9)という劣悪な社会環境、これらを二つながらにしてつくりだした経済システムに対峙していくこととも言える。人びとは現金しか生活手段を持たない中で、援助動向や世界的な景気など外部環境にさらされ、翻弄されてきた。こうした中、東ケープ州やリンポポ州での家庭菜園などJVCの過去の活動において確認されてきたように、小規模ながらも自立した生計手段を持つことが人びとの生活改善に有効であり、JVCは今後もこれを支援していく。
また、世界最多の国内陽性者数は、打つ手のないまま増加の一途を辿っており、多くの人がさらに貧困に追い込まれると同時に、親を亡くす子どもが後を絶たず、次世代へとつながる深刻な問題となっている。HIV/エイズは、格差が広がり、様々な課題を抱える中で、他の課題により引き起こされ、結果として他の課題へと帰結しており、国の大きな課題となっている。JVCとしては今後もこの課題に関わっていく。

4.今後想定される活動と戦略

①身近にある資源を使った菜園(環境保全型農業)

JVCでは、これまで農業が衰退した農村地域(東ケープ州)において、環境保全型農業の研修を通じて、環境の回復と黒人農民の自立を支援してきた。また、この経験を活かしリンポポ州ではHIV/エイズ陽性者支援事業の活動要素のひとつとしても菜園活動を実施してきた。

アプローチとしては、これらの経験を活かし、身近な資源を使った農法を理解・実践していくためのワークショップを実施した後、日常的な実践が定着するようにフォローアップに注力する。その際、JVC撤退後も自ら実践を継続できるような人材を育成し、彼ら自身がその意義を周囲の人びとに伝えていけることを目指す。その際、菜園活動による生計向上を目指すというよりは、生活を補完するものと捉え、生活改善の一環として実施する。本活動で一事業とするのではなく、CBO、NGOと協働する際の活動の一要素として実施することもある。

② HIV/エイズ

南アフリカでは、人口の12%が感染し、15才~49才の死亡原因の40%がエイズ関連であると報告されている。蔓延の原因には、出稼ぎ労働先での売買春や、エイズへの偏見や誤った知識がある。母子感染による乳幼児の患者やエイズ孤児も、急激に増えている。
HIV/エイズの問題は保健医療領域の問題を越えた課題であり、地域開発の立場からこの課題に取り組む必要がある。地域での予防、在宅ケア、HIV陽性者の自助グループ、エイズ遺児への支援などにおいて、現地NGO/CBOと協働し、住民が主体となって進めていく活動に協力していく。

南アには、質の差はあるにしても、NGO、CBOが活発である。JVC南アでは今後上述のテーマに沿って活動を実施していくが、その際のアプローチとしては、JVCはあくまでも外部者であり、彼らが社会づくりの一端を担っていることを尊重し、今後も現地のNGO、CBOと協働して活動していく。これには地域にアクセスする際に人びとと信頼関係が築きやすいという利点もある。JVC南アの過去15年にわたる活動からの学びとして、JVCが先に課題(イシュー)の設定をした上で、人間関係のない地域に入って調査をし、活動を開始するという方法は、現地NGO、JVCの双方にとって危険であることを教訓として得た。このため、できるかぎり既存のネットワークのなかから見えてきた課題をとらえ、それを共有したうえで活動を実施していく。

(1)民主化後、新政権は当初開発志向で分配重視の「復興開発計画(Reconstruction and Development Programm: RDP)」を展開していたが。1996年には市場傾向で成長重視の「成長雇用再分配-マクロ経済戦略(Growth, Employment and Redistriturio: A Macro economic Strategy: GEAR)」を導入した。その後、2006年2月、当時のムベキ大統領は通常国会施政方針演説において「成長加速と共有に向けたイニシアチブ(Accelerated and Shared Growth Initiative of South Africa:ASGISA)」の実施を表明した。2014年までに失業と貧困の半減、経済成長率年平均6%の達成を目指している。

(2)World Bankのホームページによると2008年度の経済成長率は石油燃料および物価上昇の影響を受け、3.8%となっており、下降傾向にある。http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/AFRICAEXT/SOUTHAFRICAEXTN/0,,menuPK:368086~pagePK:141132~piPK:141107~theSitePK:368057,00.html

(3)Statistisc South Africaの2008年度第3四半期報告によると、15-64歳の黒人人口のうち、就業者=働いている人の割合が40.1%となっており、残りの59.9%が働いていないことになる。このうち失業者27.4%というのは、働いておらず、かつ具体的な求職活動をしている人に限られ、働いておらず、求職もしていない人はnot ecomomically activeというカテゴリーに入り、失業者とはみなされない。なお、就業者のなかには、短時間しか働いていない人や、インフォーマルな働き方の人も含まれる。"Quarterly Labour Force Survey-Quarter 3, 2008", Statistics South Africa (http://www.statssa.gov.za/)

(4)ここでいう物質援助とは、「現場にないものを見つけ、外部から与えること」と言い換えられる。こうした投入により短期的には住民の生活は改善されるため依存が生まれることと、それが無くなると人びとの生活はすぐに立ち行かなくなり、結果としてその援助への依存を高めることにつながる。「豊かな白人社会に近づくプロジェクト」も同様で、黒人社会にある伝統や文化、人材を活かすのではなく、白人社会のもつ、特に「量」の獲得の達成を目指すために、おのずと外部投入が多くなり、住民の自立への展望が描けなくなる。援助対象者は外部資源への依存を高めた結果、これらの持つ条件に翻弄される機会が増えることにつながる。

(5)「JVCが去っても自分たちで続けていける。今後JVCとは友人として村を訪問してほしい」という発言があった。2008.8月実施の事業終了時評価インタビュー結果より

(6)2006年度実施の評価報告書参照。南ア政府による食糧増産援助は、契約会社が大型トラクターを使い農薬処理されたハイブリット種を作付け、除草剤や殺虫剤、化学肥料を大量に投入する。最初の4年は政府による補助金があるが、毎年25%ずつ農民の負担率が上がっていき最終的には100%負担する。1ヘクタールにかかるコストは、R3,500(約7万円)で、これはトウモロコシが豊作だとしてもその販売額を大幅に上回る投入額である。

(7)この数字は、全世界の陽性者3320万人のうち6人に一人が南アフリカ人であることを意味する。成人人口(15-40歳)においては約20%の感染率。また、現在南アでARVの服用が必要とされている人は100万人強いるが、うち公的医療機関で服用している人が48.9万人、私立の医療機関で服用している人が10万人、ARVにアクセスしていない人が52.4万人いるとされている。http://www.unaids.org/en/CountryResponses/Countries/south_africa.asp

(8)2008.11月実施の事業最終評価インタビュー結果より

(9)177ヶ国中。2007/2008 Human Development Report South Africa
http://hdrstats.undp.org/countries/country_fact_sheets/cty_fs_ZAF.html

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